中学受験 男子と女子に立ちはだかりがちな壁って!?
2月 17th, 2022
新型コロナ感染拡大が収まらぬなか、迷った末に実施した低学年部門の「体験授業会」ですが、昨日の((2月16日)「己斐校 玉井式体験授業」をもってすべての日程を終了しました。
いまだコロナ禍のさなかにあり、感染の危険性が高い状況にあります。そんななかでの「体験授業」であり、しかも低学年児童が対象ですので、参加いただいたご家庭はそんなに多くはありません。それでも校舎によっては、各学年とも受け入れ限度として設定した枠いっぱい近くのご家庭に参加いただきました。この場を借りて厚く御礼申し上げます。
低学年児童の保護者は、何よりもわが子の授業参加の様子や、指導の現場である教室の雰囲気を見て確かめたくなるものです。わが子の健全な成長を願い、現状を見極めようという思いが強くあるからでしょう。したがって、通年はお子さんがたが初めて足を踏み入れる学習塾の雰囲気に慣れた頃を見計らい、保護者には教室に移動していただき、授業を参観していただいています。しかしながら、オミクロン株による感染がまだ収まっていないこともあり、参観はご遠慮いただかざるを得ませんでした。誠に申し訳なく思っています。
そこで、全部の会場ではありませんが、低学年部門の設立者である筆者が可能な範囲で会場に出向き、授業時間と併行して「低学年児童期の学力形成の重要ポイント」「ジュニアスクール・玉井式国語的算数教室の特徴と指導のしくみ」「低学年児童期の家庭教育」などをテーマに掲げ、保護者に約70分かけてご説明しました。70分と言えば、大人にとってもいささか長時間であり、最後までお聞きいただくのは申し訳ないと思っていましたが、熱心にお聞きくださるのみならず、ノートにメモを取ってくださるかたが多数おられ、感謝の気持ちと同時に、頭の下がる思いをいたしました。参加くださったみなさま、ほんとうにありがとうございました。
終了後、会場で保護者の方々にもっと時間を割いて強調すべきことがあったのを思い出しました。今回はそのことについてお伝えしようと思います。それは、筆者自身が長年中学受験指導を行い、子どもたちをつぶさに見てきて痛感していることです。それは、男女が突き当たる壁の存在です。子どもたちすべてに当てはまるものではありませんが、ちょっとご紹介しておきましょう。
① 男子 ~読み書き能力の発達の遅れがブレーキになる~
男子の多くは、読む力や書く力の発達の遅れが、学習成果をあげるうえでブレーキになりがちです。特に顕著なのは国語、とりわけ物語の長文読解です。登場人物の行為と心情の関係がきちんと理解できず、的外れな解釈をしがちです。相手の行動を促すため、敢えて厳しいことを言ったり、嘘を言ったりしている場面がよくありますが、その言葉の裏にある気持ちや意図を読み取れません。また、記述式の問題に対する回答を見ると、主述の関係が整っておらず、ちゃんとした文になっていないことが多々あります。
説明会では、子どもの語彙発達の様子を、資料を使ってご説明しました。4~6年生の児童期は、人生でいちばん語彙を多く獲得する時期にあたります。発達心理学者が「語彙の爆発」と呼ぶこの急激な語彙の増加は、低学年期の読みの態勢づくり、読書の励行、家庭内の会話などがベースにあってこそ可能になります。男の子の多くは、音読を経て黙読へ移行する流れが荒く、本の著述内容の把握がおろそかになりがちです。また、筋の展開を追いかける表面的な読みに終始する子どもが多いものです。それが人物の心情把握や抽象的な表現の理解力を欠く原因になりがちです。
また、家庭内の会話も自分の考えを丁寧に伝えたり、相手の伝えようとしていることを正確に受け止めたりするための練習の場になっておらず、思考を言語化したり、相手の思いを踏み込んで理解したりする力を欠きがちです。また、自分の思いを綴る経験を豊富に積んだ子どもは、たとえ進歩が遅くても、やがては上手に書けるようになるのですが、このステップを欠いたまま高学年になると、書くことを極端に苦手がる子どもになりがちです。
お子さんが低~中学年のうちなら、こういった読解力不足、記述能力不足の問題をうまく回避できるでしょう。この問題については、過去の記事に何度も対策をお伝えしていますので、心配なご家庭はぜひそれを参考にしていただきたいと思います。
② 女子 ~算数の図形・速さなどの単元を苦手にしがち~
いっぽうの女子は、そもそも言語能力において男子より優位にあると言われます。さらに、丁寧に読む姿勢もあり、高学年時の読み取り能力は男子よりもずっと高いのが普通です。このことにも関連しますが、精神年齢も男子より1歳半~2歳ぐらい高く、人物の心情把握などの問題には、男子よりも圧倒的に強いという違いがあります。
その女子が、こと算数の、それも図形や速さなどの単元となると、男子よりも苦手とする子どもが圧倒的に多いという問題が存在します。「そもそも女子は算数・数学に弱い」と、これまで言われてきましたが、これは能力の性差と言うよりも、幼児~児童期前半までの遊びや学習の違いがもたらす面が強いということが、最近の脳科学の進歩によって知られつつあります。男の子は、動くもの、形あるものに強く反応し、いじったり、組み立てたり、分解したりする遊びを飽くことなくやり続けます。たとえば、レゴを好むのは女子よりも男子ですね。いっぽうの女子は、静かで色彩豊かなものに反応し、強い興味を示します。塗り絵や着せ替え人形などがそれにあたるでしょう。
女子のなかにも、男子と同じようなものに興味を抱き、手にしたがる子どももいます。そうすると、そういった経験が、形あるものや速さなどに対する感覚的素養を磨いてくれるわけです。そのことに鑑みると、今のうちにそういった方面の才能を磨くような経験を女の子がすれば、状況は変わってくるのではないでしょうか。以前このブログで書いたことがありますが、弊社の5年部のテスト結果を分析してみたことがあります。図形単元のテストの平均点を、玉井式の出身者とそうでない子どもとの平均点を比べてみたのです。すると平均7~8点ほど玉井式出身者のほうがよいという結果が確認されました(年によって違いもあり、あまり強調し過ぎないよう配慮しています)。
さて、ご存知のようにIT社会の訪れで、もはや男性か女性かを問わず、理系タイプの人間が強く求められているのが今日の日本です。いっぽう、グローバル社会の到来に伴って「語学、語学」と叫ばれるようになり、おびただしい数の若者が海外留学をしていますが、外国語を武器に就職で引手あまたかというと、それほどでもありません。「語学力」だけでなく、「専門性」や「発信力」「コミュニケーション能力」を携えていないと、語学だけでは食べていけません。つまり、外国語を話すとき、日本語を話すときに関わらず、自分の思考を言語化する能力や、他者とうまく意思を通じ合える力がなければ社会で自分を通用させることはできません。ですから、理系の感覚的素養を生かせるかどうかも、語学に堪能であることを生かせるかどうかも、人間としてバランスのとれた成長が伴ってこそのことだと言えるでしょう。
もう一つ。児童期までの学習においては、文系か理系かに偏るべきではありません。将来の進路の選択肢をしっかりと担保できる人間にわが子が育つよう、バックアップしてあげたいものですね。その意味において、今回お伝えしたことが、お子さんの教育のありかたについて考えるうえで多少なりとも役立ったならうれしいです。
低~中学年児童期のお子さんには、自らの能力開発に欠かせない、今こそ経験しておきたい学習事項が厳然とあります。お子さんの現状を振り返り、今手を打つべきことは何かをチェックしてみてください。