質問上手になると学習効率がぐんと上がる!

5月 22nd, 2022

 6年部は、4月末をもって小学校課程の学習を終えました。そして今や、本格的な受験対策を展開する「応用力養成期」に突入しています。これからお子さんの取り組みは徐々に熱を帯びてくると思います。おたくではどうでしょう? 親子共々今からが大変です。悔いの残らぬようがんばってまいりましょう!

 とは言え、応用段階に入ったからと言って一気に学習の難度を上げるわけにはいきません。教科書内容の学習を終えたばかりの受験生の学力は、まだ入試のレベルには遠く及びません。したがって、入試までの期間を睨みながら、計画的に段階を踏んで学力を引き上げていくことになります。この応用段階の学習で大いに役立つのが"質問”です。質問は、無駄な時間を省き、効率の高い学習を実現するうえで大いに威力を発揮するからです。

 ところが、質問は小学生の子どもにとっては勇気の要る行為です。また、どこをどう質問すればよいのか、それすら判断できないお子さんが多いのが現実です。中学生や高校生になると変わってきますが、小学生にとっては敷居の高い行為なんですね。その一方で、厳然たる事実があります。質問はしたほうが一人で頭を悩ませるよりも収穫が多いに決まっていますし、先生への質問を上手にしているお子さんほど成果をあげています。また、質問を繰り返すプロセスで先生から多くの受験に関するアドバイスももらえます。こんなに得なことはありません。今回の記事はこのことを踏まえ、どうにかして質問ができる状態を築けないものかと思って書き始めたしだいです。

 本題に入りましょう。ご存知のように、質問は闇雲にすればよいというものではありません。たとえば、算数の解法を懇切丁寧に教えてもらったとしても、質問者が疑問点や自分が突き当たっている壁を明確に意識していなければ、ただ解きかたを教わっただけで終わりかねません。先日、ネットの記事で見かけたのですが、「欧米人はあまりに早く答えを知りたがる」という指摘がありました。「わからないことがあれば即質問」というわけです。しかし、これでは自分が直面している壁を突き破ることにはならないし、質問して疑問が氷解した喜びも味わえず、更なる意欲が湧いてくることも期待できません。

 いっぽう、日本では練習を積むことで答えを見つける力を養うことが推奨されています。日本の先生の役割は、子どもの質問に答えることではありません。子どもを自己発見へと導いていくことにあるのです。しかしながら、自分で練習を積み重ねる段階で挫折する子どもも少なくありません。自力解決にこだわるあまり、徒に時間とエネルギーを費やすことも少なくありません。質問による学習 VS 自力解決学習、どちらが有効なのでしょうか?

 この問いかけに対して、みなさんはどう思われますか? たぶん、多くのかたはつぎのように考えるのではないでしょうか。「よく考えもせずに安易に質問してもダメだけど、一人でいくら考えても解決に至らなければ努力は無駄になりかねない」と。日本では、自己鍛錬という考えかたがあり、人間修養の一環として「他人に頼らず自分で解決する」ということにこだわる傾向があるように思います。それが質問下手につながっているのかもしれません。しかしながら、自立という概念のなかには、「自分でどうしても解決できないときは、他者の力を借りて解決する」という姿勢も含まれます。上手に質問したり、他者の助力を得て解決する力を養ったりすることも、人生をわたるうえで重要なのは間違いありません。要はバランスであろうと思います。

 できるなら、夏休みまでに質問を要領よくできるようになっておきたいですね。夏の講座では、先生に質問できる時間も普段の講座より多くありますし、夏休み頃から入試問題への取り組みも始まります。上手に質問して成果をあげられるよう、上手に質問ができる態勢を整えておきたいところです。

 前述の内容からおわかりいただけると思いますが、いざ質問をしようと思っても、いきなり上手に質問できるとは限りません。多くの場合、どう質問してよいかわからない、うまく知りたいことを先生に伝える自信がないため、質問を躊躇したり断念したりすることになりがちです。そこで、今から質問上手になるための練習を意識的にしておくとよいでしょう。以下はその例です。

 順序が逆になります(多くの子どもが突き当たっている課題を先にします)が、まずは②の説明から。自分の考えを理路整然と話せるようになるには、人に説明する体験の繰り返しが不可欠です。感覚的な部分も含め、自分が今考えていることを言語化する訓練は、自分の思考をクリアに整理整頓することにもなります。このような練習は、学力とあまり関係ないように思われるかも知れませんが、やればやるほど頭脳が鍛錬されて明晰になりますから、ぜひお子さんの練習相手になってあげてください。これはもう、他では絶対にできない、家族ならではのサポートです。

 お子さんは、①のような取り組みを日頃の家庭勉強でしておられるはずですが、「なんとなく」形式的にやっていることはありませんか? 家庭勉強の基本を、これまで以上にしっかりとやってください。たとえば、算数のテキストの練習問題で、解くための糸口が見つからないときには「要点チェック」を何度も見直したり、授業で取ったノート(特に板書や自分の気づきメモ)を点検したりしていると、突破口が見つかることがよくあります。そのやりかたをもっと徹底し、洗練させましょう。こういう取り組みをくり返していると、たとえ自力解決できなくても、「何がわかっていて、どこがわからないでいるのか」を頭の中で整理する力が養われます。それが要領よく質問するうえで大いに役立ちます。

 この二つを2カ月余り継続されたら、おそらくお子さんは随分変わります。①は自力解決能力のスキルアップ、②は要領よく質問できるようになるためのスキルアップで、この二つが連動するようになると、飛躍的に質問力が高まるとともに、お子さんは冴えた頭脳のもち主へと成長していきます。中学校進学後の長い学習生活においても、上手に学力を伸ばしていくための体制も整うことでしょう。

 最後に。子どもの頃から勉強が得意で、たいがいの入試問題を解ける保護者もおられます。ですが、よくわかっている大人程全部を教えてしまいがちです。また、一生懸命教えているのに成果が伴わず、無意識に子どもを傷つけるようなことを言ってしまうこともあるようです。これでは親のサポートも逆効果を招きかねません。恵まれた家庭のお子さんが、親以上の学力に到達しないケースが見られる理由も、それと無関係ではないような気もします。学習指導のプロは、解きかたをすぐには教えません。考えかたや解きかたの糸口を発見させるよう導きます。それによって、子どもは発見の喜びを味わい、更なる意欲を駆り立てて学びます。学問での大成は、そういう勉強で実現するものではないでしょうか。

中学受験は12歳の一度だけ。今できる、家族ならではの応援をしてあげてください!

Posted in アドバイス, 中学受験, 勉強の仕方, 家庭での教育, 家庭学習研究社の理念

おすすめの記事