書いて覚える、声に出して覚える習慣を!
8月 1st, 2022
いつの間にか夏休みも序盤を終え、8月に入りました。前回のブログでは、「朝の起床や就寝などの基本的生活習慣の自立」と「勉強と遊びの切り替え」を夏休みの努力目標にすることをご提案しましたが、試みておられるでしょうか? まだ夏休みはだいぶ残っています。おかあさんがたには、声かけやほめ言葉でお子さんの背中を押していただくようお願いいたします。
なぜおかあさんかというと、日本では子育ての大半をおかあさんが担っておられます。そのため、おかあさんの影響力が他の国々、特に西欧の国々と比べて随分大きいと言われます。たとえば、いくつかの課題の中から子どもに一つ選ばせるとき、そのうちの一つについて、「これはあなたのおかあさんの強い希望で用意したものだよ」と言うと、子どもはその課題を選ぶ傾向が強いそうです。
さて、今回は学業に適応性の高い脳を築くための提案です。みなさんのお子さんは、日頃の家庭勉強で知識をインプットしたり確認したりするとき、対象事項を文字にして書いたり声に出して読んだりすることを、どの程度しておられますか? 「面倒くさい」と言ってやりたがらないお子さんもおられるかもしれません。何しろ、鉛筆を握り文字(特に漢字)を書く作業は楽ではありません。声に出して読むのも同じように、音声というバイアスを伴うため、こちらも苦痛に感じるお子さんがおられることでしょう。しかし、負荷がかかるということは、当該の身体部位に刺激があてられ、脳との連携が強化されます。また、学習するお子さん自身に「やろう!」という意志が求められる積極的な学習法であり、気合や集中力も養われます。結果として知識を増やし、学習能力を高めることになります。
① 書いて覚えることの効能
まずは書いて覚えることの効能について考えてみましょう。脳科学の専門家の著書に次のような著述がありました。
手で文字を書くときは、脳のいろいろな部位が働き始めます。まず、右手を動かすために左前頭葉の運動野と左頭頂葉の体性感覚野が働きます。さらに目から入ってきた文字の処理で後頭葉の視覚野が活性化し、そして文字の形を処理する側頭葉と意味を理解する角回も活性化します。これらに並行して、思考や記憶の働きにかかわる前頭連合野も活動を始めます。このように、手で文字を書いて覚えるのは、目で文字を見て覚えるのに比べると、より多くの脳領域が関係していることがわかります。
どうでしょう。昔から手と脳は連動していると言われますが、手を使って書いて覚えるのは学習効果の高い方法と言えるでしょう。最近は、電車やバスなどのなかで漢字の字形や英語の綴りを手でなぞって(さらには、小さく声を出しながら)覚えている中学生や高校生を見る機会がほとんどなくなりました。これを空書きと言いますが、これも覚えるうえで効果のある方法ですから、ご家庭での勉強の際には取り入れてみてはいかがでしょうか。上記引用文の著者である永江誠司先生(福岡教育大学名誉教授)は、「空書きは8~10歳の頃に増えてきます。小学生は文字を書いて覚えるのに適した年齢だと言えるのです」と述べておられます。音読との併用もお勧めとのことです、
②声に出して読んで覚えることの効能
音読にも若干触れたところで、つぎは音読の効能や重要性について考えてみましょう。音読については、過去このブログで何度もお伝えしてきました。ですが、ここ2~3年はあまり取り上げていませんので、今回は久しぶりにお伝えしてみようと思います。
音読は、正確でスピーディな黙読を保障するためのスキルとして非常に重要なものです。それだけでなく、学習事項を記憶するうえでも大変有効です。学習事項を説明する記述をただ目で追っていく黙読と違うのは、活字の連なりを音声言語に変換する作業が加わることで、学習事項を目と耳という二つの感覚器官を通して脳にインプットしています。したがって、より記憶に残す力が強いと言えるでしょう。
あるとき、たまたま広島の私学出身ということで、外国語の同時通訳者として活躍されている女性と交信する機会を得たことがあります。せっかくのチャンスでしたから、そのかたに語学の専門家という立場から子どもたちの勉強について何らかのアドバイスがあればと思ってお願いしました。すると、次のような言葉をいただきました。
音読が大切です! 要領よく、上手に話す頭の回路をつくるために、音読は大切なものです。ところが、今の日本の子どもたちは音読をしなさ過ぎです。海外では学校で詩の朗読をするし、イタリアでは試験も口頭です。
このように、言語の達人も音読の重要性を認識しておられるようです。音読は、話しながら言いたいこと・伝えたいことを頭の中で上手に組み立てる力を養ってくれるのだそうです。また、このかたは仕事柄外国の要人と会う機会が多いため、毎朝新聞記事のチェックを欠かさないそうですが、その際には必ず声に出して読むそうです。そのほうが、なじみにくい組織名などをよく記憶できるからです。
夏休みは学校への通学がないぶん、日頃できない様々な活動の機会を確保することができます。しかし、その分生活リズムは学校があるときよりも不規則になりがちであり、「いざ勉強を!」と思っても頭がボーっとしたり体がしゃんとしてくれなかったりすることもあるでしょう。そうなると「勉強しよう」という気持ちはあっても身が入らないお子さんもおられることでしょう。前述したように、「手を動かす」「声に出す」という動作を採り入れた学習は、「やろう!」という意志を必要としますから、気合や集中力が発揮されます。暑い夏休みの時期は、その意味においても手を動かして書き、声に出して読む学習法が効力を発揮するのではないでしょうか。
暑い夏こそ、手を動かして書き、声に出して読む積極的学習を!