おかあさんの眼差しが子どもを奮い立たせる!

8月 9th, 2022

 長い夏休みも、気がつけば後半を迎えています。今年の暑さは格別で、中学受験をめざして学んでいる子どもたちの勉強にも影響しているのではないかと心配しています。また、一時鎮静化するかに見えていた新型コロナウィルスの感染状況ですが、感染力の強いオミクロンBA.5による第7波の発生以来、広島市ではこのところ過去最多の感染者数を記録しています。みなさま、くれぐれもウィルス感染対策に留意していただくようお願いいたします。

 次年度の入試まであと5カ月余りになりました(一部の公立一貫校は、12月に入学者選抜を終えます)。いよいよ受験対策の仕上げ段階に突入します。6年部の「中学受験夏期講習」では、小学校課程の中から重要単元をピックアップし、一通り学んでいます。学習レベルとしては、5月に始まった応用力養成期の学習を一段階レベルアップし、入試問題に手をつける後期からの学習へと橋渡しをしているところです。夏期講習で見つかった弱点や克服すべき課題は、今のうちに穴埋めをしておきましょう。ここで気持ちを緩めないことです。特に苦手対策の学習は期限を決め、集中力の伴った取り組みで確実に成果をあげることが肝要です。後手を踏まないよう、強い意志でやり切ることが仕上げ段階のゆとりをもたらします。お子さんと話し合い、学習の進捗を確認しながら励ましてあげてください。

 さて、ここからが今回のブログテーマに沿った内容です。前回、「夏のおかあさんセミナー」の開催趣旨をご説明した際、「日本では子育ての大半をおかあさんが担っておられる」ということに言及しました。そのことは、母親の存在が子どもに及ぼす影響の強さと無縁ではありません。日本ほど母親の影響力の強い国はないと言っても過言ではありません。しかし、それだけに子育てを重荷で辛いものと受けとめるおかあさんもおられるかもしれませんね。みなさんはどうですか? 毎日の子育てに充実感を味わっておられるでしょうか。また、わが子とともに過ごす家庭生活を楽しんでおられるでしょうか。

 「毎日、毎日、わが子はちっとも期待通りに行動してくれません。楽しいだなんて、とんでもない!」とおっしゃるかたはありませんか? それどころか、「あの態度は何?」「あの逆らいかたは許せない!」「なんであんなにもやることが雑なのか!」「いつも口ばかりで実行しない。叱ると言い訳ばかり」など、憤懣やるかたない思いをしておられるかたもおありかもしれません(これらは、これまで数多くおかあさんがたから耳にした言葉です。男子家庭が多いです)。しかし、そんな思いをしておられるかたにこそ、心に留めていただきたいことがあります。母親が子育てをどう感じていようと、どんなに子どもの現実に不満が溜まっていようとも、子どもは母親の子育てを通して自分という人間を形成しているのだという事実です。

 だいぶ前、ミラーニューロンを話題として取り上げたことがあります。人間は、目の前の相手の表情や口の動きを見て、それと同じことを脳内にある一定のニューロン群が鏡のように反芻しています。これによって、相手の気持ちと同化し、コミュニケーションを密にしているのです。子どもの場合、おかあさんの言動を自分の目や耳でキャッチし、同じ動きを脳内のニューロン群が繰り返します。毎日繰り返されるおかあさんとの接触の積み重ねが、子どもの人となりを形成していくわけです。ですから、子どもを変えようと思ったなら、まずもっておかあさん自身の言動を変えることが必要だと言えるでしょう。子どものやることを「どうせダメ」「やる気もない」という思いで接する限り、子どもは「ちゃんとやる」「やる気がある」といった状態にはなりません。

 もしも、わが子の現状に不満が溜まっているなら、まずはその不満を払拭することが最も大切なことです。そこでお勧めしたいのは、「自分は、わが子のことをどれだけ知っているか」を顧みることです。そして、わが子への限りない愛情をもつ自分を再確認することです。そうすれば、わが子の現実を受け入れ、ゆとりをもって受験生活をサポートできるのではないでしょうか? 次のチェックリストの質問に回答してみてください。

 正解は、お子さんに尋ねて確かめてみてください。あるいは、お子さんにも回答してもらい、おかあさんの回答と照合してみるという方法もあるでしょう。半分以上合っていれば素晴らしいですね(子どものことを、親は意外と知らないものです)。なかには珍答があったり、まるで見当違いの回答があったりするかもしれません。そこでのやりとりが楽しいものになれば、お子さんとの関係を見直すよいきっかけになるかもしれません。上記の質問リストは、心理学の専門家(米)の著書にあったものをアレンジしたのですが、その人によると、子どもの興味や心理状態を知っていればやる気を起こさせるために役立つそうです。それをネタにして楽しい会話の時間を設けるだけでも、子どもの気持ちは随分前向きになるでしょう。

 少なくとも言えるのは、やる気のない子どもなんていないということです。子どもは誰でも偉くなりたいのです。そして、おかあさんにほめられ認められたいのです。そのことを前提にわが子に接すれば、気持ちのゆとりが随分違ってくるのではないでしょうか。

 もう一つ言えるのは、子どもがやるべきことをやらない場合、必ずそれなりの理由があるということです。たとえ、やるべき勉強を怠った理由が「たいぎいから」であったとしても、それは子どもにすればただの言い訳ではありません。たいぎいと思ったその理由があります。何かをやって疲れていたのか、友人関係で悩みがあったのか、気持ちの尾を引く出来事(学校でつまらないしくじりをして先生に叱られたなど)があったのかなど、相応の理由があるのです。そのあたりを理解したうえで、「今度はちゃんとやるよね!」と励ましてやることが大切です。

 なお、「決めたことをちゃんとやろう」という約束を子どもが反故にした場合、親子の決め事として罰を設けるのは決して悪いアイデアではありません。約束したからには実行すべきであり、取り立てて正当な理由がなければ、罰を与えるのは当たり前のことです。そのときは、声を荒げて叱るのではなく、淡々と実行に移せばよいのです。その代わり、つぎにちゃんとやったなら満面に笑顔を浮かべてほめてあげてください。

 子どもは、親と気持ちが通じていると実感したなら、心の内に沈みかけていた「親の意向に沿いたい」という願望が再び頭をもたげ、それを行動に移すようになります。わが子に対してゆとりある眼差しを向けてあげてください。優しく背中を押してあげてください。きっとお子さんは自分の現実を顧みて、おかあさんの意向に沿った行動をとるようになることでしょう。

 親業って大変ですが、子どもの成長というすばらしい収穫が得られる、いちばんの大仕事なんですね。おかあさん、がんばりましょう!

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