興味・関心をもって取り組む学習の効能

9月 18th, 2022

 このところ蒸し暑い毎日が続いています。さすがに9月も半ばを過ぎつつありますので、朝夕は若干涼しさを感じるようになりましたが、日中は夏がまだまだ居座っているかのようです。保護者におかれては体調など崩されませんように。お子さんの健康管理にも十分ご配慮願います。

 さて、今回お伝えする話題は、小学校の3~4年生前後のお子さんをおもちの保護者を想定したものです。ただし、基本的にはどの年齢のお子さんにも当てはまることですので、お子さんの年齢を問わず読んでいただけたならうれしいです。

 みなさんはお子さんの家庭での勉強ぶりを見て、どんな感想をおもちでしょうか。「できるなら、仕方なく義務的に取り組むのではなく、興味をもって積極的にやってほしい」と願っておられるのではないでしょうか。リビングなどでお子さんが勉強している姿に活気が伴っていれば、それだけで親としてわが子が頼もしく見えるし嬉しいものですよね。しかしながら、実際はそれだけではなく、興味・関心をもって学ぶほうが学力形成によい影響をもたらすことが科学的にも裏づけられています。今回は、そのことを話題に取り上げてみました。クオリティの高い勉強の実現に向けて生かしていただければ幸いです。

 まず言えるのは、嫌々やったのでは、頭脳は活性化しません。算数の解きかたを何回頭に詰め込んでもわからない、すぐ忘れてしまうといった状況になりがちです。いっぽう、「この問題はおもしろいな」「何とかして解きかたを知りたい」と思って取り組むと、少ない時間で解決できるし、記憶にもよく残ります。脳科学者によると、人間が何かに興味を抱き、知的欲求に突き動かされた状態になったとき、記憶を司る海馬という脳部位でシータ波(θ波)という脳波が発生します。シータ波は1秒間に5回規則正しく刻まれますが、これをθリズムと言います。同じ学習時間で比べると、シータ波が発生しているときはそうでないときと比べて5~10倍の速さで学習が進むそうです。圧倒的な効率のよさですね。ダラダラ勉強している様子は、見た目にもよくないですが、真剣な眼差しで一生懸命考えているときの子どもは、極めて効率のよい学習をしているわけですね。

 シータ波を伴った学習のよい点は、学習効率を高めるだけではありません。海馬は学んだ事柄のうち、重要と認識したものを長期記憶に加工して脳内(側頭葉)に留めてくれます。子どもが興味をもって学んだことは長期記憶に残される確率が高いため、復習をする回数が少なくて済むというメリットもあります。嫌々学んだ事柄は、テストが終わると直に忘れ去られてしまいがちですが、子どもの知的欲求に基づく学習は、忘却のリスクを随分と軽減してくれます。男の子は復習を嫌がりますが、記憶によく残っていたなら何度も復習をする必要もなくなります。まさに「学習は興味をもってすべし」ですね。

 ここで現在のお子さんの学習に向き合う姿勢を振り返ってみてください。どの教科でもよいのですが、好きで一生懸命取り組んでいる分野はありますか? 親はわが子に「勉強の楽しさや喜びを味わってほしい」と願いつつも、現実の学習生活はうまくいっていないご家庭もあるでしょう。自分から取り組もうとしない様子にイライラを募らせ、いつの間にか叱って無理やらせる状態に陥っているご家庭はありませんか? この状態が続くと、子どもは勉強嫌いになってしまい、知的好奇心に支えられた本来の勉強と縁遠くなってしまいかねません。子どもの勉強嫌いは、周囲の大人の接しかたが原因になっているケースが多いと言われます。もしもその傾向を感じておられるなら、今のうちに状況の転換を図る必要があるでしょう。

 小学校課程の学習は、将来大人になるための基盤づくりのためにあります。算数には数にまつわる様々な事象を、シンプルな計算式で解き明かす楽しさがたっぷりと詰まっています。言わば、公式そのものを編み出す魅力にあふれています。国語の学習は、母国語の習得に欠かせない教科であるのみならず、文章を通じて様々な世界や人間に触れる楽しさを満喫させてくれます。理科は、自然界の現象についての謎を解き明かすワクワク感をたっぷりと味わわせてくれます。社会は、人間の辿ってきた歴史を振り返ったり、現在の日本や世界の様子を学んだりできますから、いったん興味をもったなら、知りたいことが尽きることなく湧き出てくる教科です。それぞれの教科には独特のおもしろさがあり、学ぶ楽しさや喜びを与えてくれるのは間違いありません。お子さんがそれに触れることなく大人になるのは、あまりにも残念でもったいないことではないでしょうか。

 勉強は小学校で終わることはありません。中学、高校、大学は無論のこと、社会人になってからも必要なものです。小学生のうちに、勉強に前向きな姿勢を築いておきたいものです。そこで筆者からの提案です。ご家庭で、つぎのようなことを試みてみてはいかがでしょうか。

 児童期までの子どもが、知的好奇心をすっかり失ってしまうなどということはありません。「勉強を強要されている」など、勉強へのネガティブな受け止めかたをするなんらかの要因が好奇心の発動を妨げているだけです。

 そこでご家庭の試していただきたいのは、子どもの知識欲求を継続的に刺激するような働きかけをすることです。先ほど、今回の記事を3~4年生をおもちのかたに向けたものだと書いたのは、上記のような働きかけが最も功を奏する年齢期だからです。①にせよ②にせよ、どのご家庭でもある程度されてきたと思いますが、それを徹底してやれば必ずお子さんに変化が訪れます。

 ①についてですが、お子さんの興味の対象となるものを基本に置きつつ、できるだけ幅広い興味に応えられるような図鑑を何冊かおたくのリビングに常備することをお勧めします。そして、ことあるごとに「それ、図鑑に載っているかもしれないよ。調べてみよう!」などと調べること、知ることの楽しさを味わわせてやりましょう。本は、買うときりがないですから、図書館でいろいろなジャンルの本を借り、お子さんの目に触れるところに置いてやりましょう。おかあさんも目を通し(とても全部は読めないでしょう)、タイミングを見て、「この本、おもしろかったよ」などと水を向けてみましょう。物語だけでなく、伝記や写真集などのようなものも借りてみて、お子さんがどんな本に興味をもつか、いろいろと試みてください。

 ②についてですが、4年部や5年部の算数のテキストの課題の解法に目を通してみると、解きかたの面白さに惹かれる思いをすることがよくあります。その話題をお子さんにもち掛け、「この解きかた,おもしろいね」などとやりとりをしてみてください。単元にもよりますが、お子さん食いついてくる課題がきっとあると思います。また、3年生ぐらいだと、ジュニアや玉井式の算数の解きかたの解説などを見て、おもしろそうだと思ったものを取り上げ、お子さんと一緒に考えるなどの働きかけをしてみてください。考えることは基本的に楽しいものです。そういうことがきっかけで、勉強に対する能動性が徐々に高まってくることもあるでしょう。

 小学生時代に、勉強のもつ楽しさやおもしろさに触れ、考えて解き明かすことに熱心な姿勢を築いておけば、先々の人生の歩みに大きなプラスの作用を果たします。前述のように、興味をもって学ぶことは学習の効率性を高めますし、優れた頭脳形成にもつながります。親の働きかけでわが子よい方向に導ける今の時期を大いに生かしていただきたいですね。

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