「秋のおかあさんセミナー」が終了しました!
12月 3rd, 2022
このところ多くの行事を抱えていることもあり、ブログを書く時間が僅かしかありません。そこで、先日実施した「秋のおかあさんセミナー」の報告をしようと思います。今回のセミナーは、「効果的なほめかたの実践研究」というタイトルを掲げて実施しました。
これまでこの種の催しは平日に実施していましたが、仕事をもっておられるかたが多いことを考慮し、今回は試しに11月19日(土)、11月22日(火)の2回に分けてみました。どちらも申し込みの受付開始後、定員20名がすぐに埋まったので驚きました。子育てに関する地味な内容の催しに、多くのかたが興味をもってくださったことに感謝しつつ、心を込めて準備いたしました。
「おかあさんセミナー」の呼称は、ジェンダー平等の時代に即していないかもしれません。しかし、日本では子育ての大半を母親一人が引き受けていると言われます。弊社のような進学塾に子どもを通わせるとなると、母親の負担は否が応でも増すことになります。受験の助走では、日頃の家庭生活面での世話に加え、子どもの家庭学習のフォローをする必要も生じます。果ては、塾への通学の送迎まですることになります。おまけに、テスト結果が返ってくるたびに平常心ではいられなくなり、ストレスを感じるおかあさんも少なくないことでしょう。そういったおかあさんがたへの応援の意味で、敢えて「保護者セミナー」ではなく「おかあさんセミナー」と名づけました。
おかあさんへの応援の気持ちで実施する催しで、女性が参加対象であることから、「今までとは違った雰囲気を演出できないか」と、担当スタッフがいろいろと会場を探し、見つけてくれたのが紙屋町のパセーラ3階にある貸会場でした。本や輸入雑貨を扱うショップの本棚をスライドさせると、まるで隠し部屋のようなミーティングルームが現れます。全体が白で統一されたおしゃれな雰囲気がまたよく、「ここでやってみようか」ということになりました。すぐ近くにカフェがあるので、「途中休憩がてら、そこからコーヒーやジュースを取り寄せよう」ということになり、弊社としてはユニークな仕立ての催しになりました。呉や東広島の通学区からお越しになるのは難しいのは承知していましたが、校舎単位で実施すると人数も集まらない面もあり、申し訳ない気持ちを抱きつつも、この会場のみでの実施といたしました。
さて、セミナーの内容は、「子どもをいかにほめるか」です。本ブログで何度かお伝えしましたが、ほめることの効果は児童期の子どもにとって格別に大きいものです。というのも、自我が確立した中学生以降になると、勉強の動機は自分自身の手応えや満足感、先々を見通した目標意識(これがいちばんの要素)などが主体になりますが、児童期までの子どもはそれらよりも親の意向や関わりがモチベーションに大きな影響力をもつと言われます。「おかあさんが喜んでくれる!」「おかあさんが励ましてくれる!」「おかあさんがほめてくれる!」――これらのほうが子どもを勉強に向かわせる大きな原動力になります。
特に日本の小学生はその傾向が顕著です。いろいろな難易度の学習課題を子どもに見せたうえで、難しめの課題を手に取って、「これは、あなたのおかあさんが取り組むことを期待しておられる課題だよ」と伝えると、多くの子どもがその課題を選んで取り組んだという実験の報告があります。
日本の子どもにとっておかあさんの存在はそれほど絶対的です。そのおかあさんがほめてくれるか、ほめてくれないかは、子どもの学習意欲に影響しないはずがありません。そこでまず、4・5年生の通学生に「あなたはおかあさんにほめられていますか?」という内容のアンケートを実施しました。そして、結果をセミナーに参加されたおかあさんがたに報告しました。アンケートは大がかりなものではなく、ある校舎に依頼して任意に選んでもらったクラスで行ったものです。以下の資料をご覧ください。
★ 秋のおかあさんセミナー【4・5年生対象 アンケート結果】(PDF)
「おかあさんにどれぐらいほめられていますか?」の質問に対する回答状況を見て、どう思われましたか? 「結構おかあさんはがんばっておられるな」と思われたかたもおありでしょう。しかし、子どもはどんなにたくさんほめられても、「もう十分だ」とは思いません。いくらでもほめられたいという願望をもっています。そういう観点から見ると、「せめて毎日1回はほめていただきたいな」と思います。「ほとんどほめられることがない」と感じているお子さんも一定数おられます。そのお子さんの心境を慮ると、少しかわいそうになりますね。
もう一つ、「どういうときにほめられるか」ですが、成績面だけでなく、行動の自律性、努力、手伝いなどの視点から子どもを見てほめておられる家庭があるのはうれしいですね。進学塾にわが子を通わせると、多くのおかあさんはテスト結果に目を奪われがちです。その結果、成績や順位に関心が偏り、「成績がよかったらほめる」ことになりがちです。この「~たら」という交換条件のほめかたは望ましくありません。
このことをとっかかりとして、つぎに「よいほめかたと悪いほめかた」を例をあげながら、子どもが親を信頼し、意欲を高めるようなほめかたはどのようなものかを一緒に考えていただきました。たとえば、「優秀」「自慢の息子」「正直者」などのほめかたは、教育の専門家からは「望ましくない」とされています。これはいわゆるレッテル張りで、こういうほめかたをされると子どもの自己認識とギャップが生まれ、「ボクは正直者なんかじゃない。たまたま正直に報告しただけだ!」と、内心で反発する子どももいます。「優秀な子」と言われ続けると、「いつも結果を出さないと」という強迫観念に襲われ、ズルをしたり、難しいことへの挑戦を避ける人間になったりする恐れがあります。
もう一つ、子どもにもいろいろな性格があります。その性格を知ったうえでほめかたをひと工夫すれば、ほめることの効果もより大きくなるでしょう。そこで、以下のようなマトリクスに基づいて性格を4つのタイプに分類し、それぞれに合ったほめかたを一緒に考えました。
基本的には、①プロモータータイプ(自己主張高め・感情表現高め)、②コントローラータイプ(自己主張高め・感情表現低め)、③サポータータイプ(自己主張低め・感情表現高め)、④アナライザータイプ(自己主張低め・感情表現低め)という分類基準に基づきます。
①は、とにかくよい点をほめ続けることが肝要です。否定されることに弱い一面があるので、落ち込ませないよう配慮しましょう。②は上から目線でなく、他者の役に立っている点があったら率直にほめ、周りに貢献していることを伝えてあげると、自己中心性が抑制されてリーダーシップがよい方向に生かされます。③は、小さなことでもがんばっている過程をすかさずほめることが効果的です。いつも他者に気遣っているので、「報われた」という思いをさせてあげましょう。④は、よい行いを具体的に取り上げ、どこをよいと思ったかをしっかり伝えましょう。おだては禁物です。「自分をわかってくれている」という手応えを与えてあげると納得し、さらにがんばるようになります。
セミナーでは、設定したテーマごとにおかあさん同士で自由に現状や感想、問題点などについて話し合っていただいたのですが、受験生の母親という同じ立場にある、それも苦労の伴う役割を引き受けている者同士ということで、とても和やかで活発な会話の声がどこまでも続くかのように響き渡りました。弾む会話の途中で話題を切り替えるのを申し訳なく思ったほどでした。
いよいよ終了時間が迫ってきました。そこで、「これからわが子をどのようにほめて励ますか」について、みなさんで今の率直な気持ちを話し合っていただいてお開きとしました。筆者が進行を務めたのですが、一番近くのテーブルにおられたおかあさんがたから、「この行事は子どもが6年生になったらもうないんですか?」と尋ねられました。「6年生の母親にこそ必要な行事だ」と思われたようです。確かに、受験が近づくほどに親子共々ストレスが増します。また、子どもが急速に大人に近づいてくるのが6年生頃です。親として対処の困難な状況に遭遇することも再々あることでしょう。
来年のことはまだ決まっていませんが、「おかあさんがたを励ます」という趣旨は必須としても、どういうテーマで、どのような形式でやったらよいかはよく検討する必要があるでしょう。ともあれ、「たのしかったです」というおかあさんの言葉をありがたく頂戴して、この催しを終了することができました。筆者自身が大いに楽しませていただきました。みなさん、ありがとうございました。
よい親子関係の構築と受験での念願成就を、心よりお祈り申し上げます!
※子どもの性格タイプの分類は、「コーチングのプロが教える『ほめる技術』」鈴木義幸/著 日本実業出版社 2009 を参考にしました。