入試に向けたわが子の自覚と奮起をどう促すか
8月 24th, 2024
夏休みも残り僅かになりました。今夏はいつに増して暑さが厳しく、夏の講座への行き来だけで体力の消耗を感じたお子さんもおられることでしょう。睡眠不足に陥ったり、冷たい物を採り過ぎて胃腸が疲弊したりし、夏バテ気味になっているお子さんもおられるかもしれませんね。小学生のお子さんの体調管理には保護者の配慮やサポートが欠かせません。十分に目配りをしてあげてください。
さて、本ブログは知育や中学受験に関わるテーマをとりあげていますが、これまで900回以上の記事のうちの95%以上を筆者が書いてきました。その筆者も年齢ゆえ、数年前からオブザーバー的な立場で家庭学習研究社の活動に関わっています。したがって、ブログの記事を書く時間がなかなか確保できなくなってしまいました。しかも、本ブログは文字数が多いため、代わりに書いてくれる人物がなかなか現れません。いったん筆が滞ってしまうと、よけいに書き辛くなってしまいます。
とりあえず、「今回は何を書こうか」と思ったのですが、中学入試が約半年後に迫ってきたことを踏まえ、受験生の保護者に向けた応援のつもりで今お伝えしたいことを書いてみようと思います。今、「入試まで半年」と言いましたが、こういう状況を自覚し、残された時間で何をすべきか、何ができるかを考えることを保護者はお子さんに期待しておられると思います。しかし、それができないのが大半の受験生の現実です。すでにイライラし、叱咤激励の声を飛ばしたり、注意を促すつもりが心ならずも怒鳴ってしまったりしているかたもおられるかもしれませんね。どうでしょう。効果はありましたか? おそらく、注意、叱責、命令などによるアプローチは、ほとんど効果がなかったのではないでしょうか。小学校の高学年に達した子どもは、「ここでがんばらなきゃ合格はおぼつかない」ということをわかっています。ところが行動に移せない。これはどういうことでしょう。
やるべきことが厳然とある。それなのに、なかなか重い腰が上がらない。それどころか、目先のくだらない遊びや無意味なことに時間を費やしてしまう。それは子どものことではありません。大半の人間の抱える悩ましい問題です。みなさんも身に覚えがありませんか? お子さんも人間の悪しき性癖(人間怠け者説)を成長とともに裏づける行為に及ぶようになります。受験を控えた小学6年生の子どもは、もはやまったくの子どもではありません。やるべきことを抱えた大人と同じ心境にあります。以下は、作家の阿刀田高氏の著書で見つけた記述の引用です。ちょっと読んでみてください。
「イギリスの随筆家ロバート・リンドが<怠け者の怠けた考え>の中で『この世でなにが楽しいと言って、やらなければいけない仕事が山ほどあるのにそれをぐずぐず伸ばして、もう少し暖炉にあたっていよう、音楽を聴いていよう、と思う瞬間ほど楽しいものはない』と書いているが、たしかに仕事を一寸伸ばし五分伸ばしにして遊んでいるときには、なにか屈折した充実感がある」
目の前にある重要な仕事を先延ばしにし、「もうそろそろやらなきゃ」というまっとうな自覚があるにも拘らず目先の快楽に身を任せる。そのときの、言葉で言い表せないスリルに満ちた楽しさというのは、国の内外を問わず、一定年齢に達した人間が引きずり込まれてしまう悪魔の誘惑のようなものなのでしょう。まだ子どもではありますが、人間として成長しつつあるからこそ、このような葛藤が克服すべき大きな問題として立ちはだかるようになるのですね。それを踏まえると、わが子をただ叱るだけではだめだということに気づかれると思います。「どう対処すれば、子どもの自覚的行動を引き出せるでしょうか? なお、親や他の大人が押さえつけて無理やりやらせ、志望校の一つに合格できることもあるにはあります。しかし、大人が助力できなくなる時期はもはや目前に来ています。中学高校生になると、自分自身で勉強をコントロールできない生徒はカリキュラムの進行について行けません。その意味において、中学受験は独り立ちに向けた準備とともにあるべきものだと心得ましょう。
では、いったいどうすれば子どもはやるべきことを自分でやろうとするようになるのでしょうか。正直申し上げると、このような姿勢は毎日の家庭生活で培われるところが大きいと思います。特に重要なのが、保護者、とりわけおかあさんの関わりです。今回は、おかあさんがたがこれまでを振り返り、問題点がわかったら意識を転換し、子どもが自分のやるべきことを自分から実行に移せる人間になるためにどう接すべきかを考える契機にしていただけたら幸いです。
筆者がこれまで関わってきたなかで、やるべきことを自らやり遂げようとする姿勢を備えていたお子さんのおかあさんは、子どもへの対応においてある種共通した特徴をもっておられます。子育ては人それぞれに微妙に違うものであり、親にも子どもにもそれぞれ特有の性格がありますから、あくまで大まかな傾向と受けとめていただくようお願いいたします。
とかく親は先回りをして考え、「~しなさい」と伝えがちですが、どうするかを子ども自身に考えさせ、「これは自分で決めたことだ」と思わせないと、実行力は発揮できません。結局は親の思っていた通りの行動を選択したとしても、子どもの自主性を尊重した結果と比べると、子どもの内面にある気持ちは全然違います。①のように、考えるべきテーマを親が切り出したとしても、どうするかは子どもに決めさせるようにしたほうが、子どもの実行力は高まるものです。そして、少しでも自発的に取り組む姿勢が見られたら、結果に関わらず喜んでやりたいものです。「おかあさんは普段は優しいし、自分の考えを尊重してくれる。でも、やるべきことをやらなかった(約束を破った)ら、怖い」――そんなおかあさんをイメージしてください。こんな対応を一貫させるおかあさんは子どもに信頼されるし、子どもの自発的努力を引き出す傾向が強いと言えるでしょう。
②のようなおかあさんには、「少し冷たい」という印象をもたれるかもしれません。ただし、何事につけても「自分のことは自分で責任をもつのがあたりまえだ」という姿勢でわが子に対処しているおかあさんの子どもは、甘えが少なく、何事も自分でやろうという姿勢を身につけていきます。怠けがちに見えても、ぎりぎりのところで踏ん張り、なんとか目の前の課題を解決するものです。家庭でのコミュニケーションがしっかり取れており、親が何を自分に求めているのかを子どもがきちんと理解していれば、こういうタイプのおかあさんの子どもは何をするにつけても自立していますから、前途有望です。
親にもいろいろなタイプがあります。上記の2例はあくまで参考にしかならないと思います。しかし、子どもの自発的行動を引き出すにはどういう接しかたが望ましいかについて、多少は参考になる点もあろうかと思います。6年生の夏の終わりごろともなると、子どもだって入試についていろいろと考えています。ですから、親から先にいろいろ言ってしまうと子どもは反発します。それでいて、子どもはまだ、親に促されなければ行動に移せない年齢段階にあります。親は子どもの自覚を尊重しつつ、わが子の自発的行動を引き出すための働きかけを試みるべきでしょう。今こそ、子どもが一皮むけて大人の域へと近づく重要な時期です。悔いの残らぬサポートをお願いしたいですね。