子どものやる気を高めるほめかたをしていますか?
9月 20th, 2024
今回は効果あるほめかた、逆効果を招く恐れのあるほめかたについて考えてみましょう。「ほめてマイナス効果を招くことがあるの?」と驚かれたでしょうか。小学校の中学年以上になると、親から自分に向けられた言葉の真意を探るようになります。したがって、不用意なほめかたをすると子どもから不快感を示されたり文句を言われたりする事態も生じます。
アメリカの心理学者アンジェラ・ダックワースは、「大人になって成功や失敗をしたとき、その原因を自分の才能に結びつけるか、それとも努力に結びつけるかは、子どものころの‟ほめられかた”で決まる率が高い」ということを述べています(どちらが望ましいでしょうか)。このことは、子ども時代にわが子をどうほめるかが、子どもの人生に少なからぬ影響を及ぼすことを教えてくれるでしょう。なお、ほめることに関する記事は過去何回も書いていますので、若干内容的に重複してしまいます。ご了承ください。
ところで、みなさんはどのくらいの頻度でお子さんをほめていますか? この質問を保護者の集まりでしたところ、「かなりほめています」とおっしゃるかたが大勢いて安心しました。ほめることの重要性についてはどなたもよくご存じなのですね。このとき、「1日あたり、何回ほめていますか?」と聞くべきだったことが後で判明しました。後日お子さんにアンケートをとってみると、「ときどきほめてくれるけど、もっとほめてほしい!」という言葉が多く返ってきたからです。おかあさんがわが子をほめる回数は、平均して週2~3回のようでした。しかし、子どもは毎日何回もほめてもらいたいのです。
おかあさんがたは、「週2~3回もほめれば十分じゃないの」と思われるかもしれません。しかし、児童期の子どもにとっては、親にほめられることがなによりも励みになります。やる気の源は‟親にほめられること“なのです。このことからもわかるように、親が子どもをほめるということは、しつけの一環としてもっと自覚的に実行すべき行動の一つなのですね。外国のある知識人は、「子どもが本来もっている価値に気づかせ、その資質を最大限に発揮させるのがほめ言葉だ」と語っています。子どもはほめられると心が落ち着き、自分に対して自信をもつことができます。児童期は人間としての特性が定まっていく時期です。このような時期に、親から適切にほめられる経験をしたなら、人間として健全な成長を遂げることができるのではないでしょうか。自他肯定型の健全な精神を養えるでしょう。
以下は、だいぶ前に実施した会員児童対象のアンケートの結果です。「どういうほめかたをされるとやる気が高まるか」と、「やる気がしぼむほめられかたはどんなのか」という質問に対する回答をまとめたものです。対象は4年生と5年生の児童です。この資料は、以前もご紹介したことがあると思います(多少まとめ直しています)。
お気づきになったかもしれませんが、左側の子どもが歓迎するほめかたの5~9は、ほめ言葉をかけられたわけではありません。しかし、そこに親に求められる対応の本質が垣間見えるように思います。「ほめるという行為は、子どもをがんばらせるためにあるのだ」と語った文化人がいましたが、その意味において5~9の対応はほめ言葉こそ発していなくても、ほめるのと同じ効果を引き出していることがわかりますね。だいいち、子どもがうれしいほめられかたをされたと感じる例としてあげているわけですから、ほめたのと同じことでしょう。
上記の回答例に、少し補足説明をしておきましょう。子どもが歓迎しやる気を高めるほめかたには、ある種の共通点が見出せます。それは、子どもが何かをしてよい結果を得たかどうかよりも、一生懸命にやったこと、努力したことを取り上げ、そこを親として喜んでくれることを子どもは歓迎しています。やるべきことを自分から率先してやったことを、親が見ていてほめてくれると喜びます。また、自分への愛情が素直に感じられるような対応をされたときにやる気が高まることがわかります。9などはその最たるものでしょう。テストで好結果を得たいのはどの子も同じです。残念な結果に終わったときには気分がしぼんでいるに違いありません。そんなとき、叱られるどころか、明るく励ましてもらったなら、子どもはどんなに勇気づけられるでしょう。テスト結果が悪いとき、つい親としては苦言を呈したくなるものですが、こういうときこそ子どもを奮い立たせるサポートをお願いしたいですね。
逆効果を招くほめられかたをリストアップしてみると、「小学校の4~5年生ともなると安易なほめかたはできない」ということがわかります。形だけのほめ言葉、裏の意図が感じられるようなほめかた、皮肉が感じられるようなほめ言葉は、親の心の内を見透かされてしまいます。5の「やればできるじゃない!」というほめかたは、なぜ歓迎されないのでしょうか。このほめ言葉は、頻繁に保護者が使っておられます。しかし、子どもによっては嫌がるケースがあります。これは、子どもが「親は、自分に能力がないと思っているんだ」ということを察してしまうからです。精神的に成長を遂げているからこその受け止めかたです。この言葉自体は問題ありませんが、「がんばったことが報われたね」という言葉を添えてあげてほしいですね。
いかがでしょう。親が子どもに寄せる愛情に変わりはありません。ただし、児童期の後半ぐらいになると、その伝えかたにも注意が必要です。また、何を取り上げてほめるかで、子どもの心に響くものが違ってきます。「もはや一人前の人間になりつつあるのだ」という前提に立ち、言葉や対応に工夫をして受験勉強に励むお子さんの背中を押してあげてください。