子ども時代に浸透させておきたい考えかた

11月 6th, 2022

 前回は、「秋のおかあさんセミナー」の予告記事を掲載しました。毎年夏休み前に「夏のおかあさんセミナー」という催しを実施していますが、「秋の」と冠した保護者対象のセミナーは初めての実施です。これは、お子さんの知育に関する重要事項は1回きりの催しで到底網羅できるものではないため、可能であれば別の時期にもやってみようと考えたしだいです。無料ですが、わざわざ足を運んでいただくのですから、参加者に手応えを感じていただける催しにしたいと思っています。筆者は児童期の学習と子育ては連動すべきものだと考えています。学力形成と人間的成長をどうバランスさせるべきか。このことに興味をおもちの保護者はぜひご参加ください。

 さて、今回は児童期がものの考えかたや価値観の定まる時期であることを踏まえ、親がわが子にどのような視点に基づいて関わるべきかをお伝えしようと思います。弊社の教室に通って勉強している子どもたちは、ほぼ全員が中学受験をめざしています。つまり弊社はいわゆる「進学塾」の看板を掲げる学習塾ですが、この種の学習塾では必ず定期的にテストを実施します。学力の現状を把握するとともに、一定の範囲で学んだ事柄がどの程度身についたかを検証する必要があるからです。

 当然ながらテスト後に「成績」が提示されます。子どもの現在地を把握するための「順位」も知らされます。100点満点での得点のみが指標なら、全員が高得点を挙げていればもれなくハッピーになれますが、これでは合格への見通しは得られません。そこで相対的評価基準が必要になります。順位はそのためにお知らせする資料です。ただし、100人テストを受けたら1番から100番まで存在します。したがって、励みにもなればショックを受けることにもなります。弊社では2週間に1回の割合でテストが行われるので、その度に喜んだりがっかりしたりするお子さんもおられることでしょう。

 もしもあなたのお子さんが、思わぬ悪い点数や順位を取ってきたら、どのように対応されるでしょうか。現に、そういう経験を何度もされている保護者もおられるでしょう。成績や順位を突きつけられる経験は、中学受験後も数多く繰り返されます。よくないテスト結果をどう受け止めるかは、子どもたちの人生の歩みにも少なからぬ影響を及ぼしますから、大人が十分に配慮する必要があるでしょう。

 では、「自分が招いた結果」について、子どもの頃に浸透させておきたい考えかたとはどういうものでしょうか。よくない結果が続くと、大概の人間は「自分には能力がない」という悲観論者になりがちです。それは果たして妥当な考えかたでしょうか。問題は、やるべきことを準備していなかったからかもしれません。たとえばテストに出される問題は、きちんとした手順を踏んで学んでいればクリアできる水準のものです(すべての問題は無理としても)。重要なのは、テストに臨むまでのプロセスを振り返ることではないでしょうか。つねに最善を尽くすことではないでしょうか。心理学者による多くの実験で、「人間は手応えを得られないことが続くと、学習性無力観に陥る」という結論が導き出されています。しかし、そういう流れに抗い、自分を立て直す強さをもつべきでしょう。実際にそれを実践して、人生の目標を達成した人は多数います。

 アメリカの心理学者アンジェラ・ダックワースは、自分にとってよくない状況を「どうにもならない」という固定思考でとらえると悪循環に陥ってしまうが、「いずれ何とかなるさ」という成長思考でととらえると、新しい試練が訪れても臆せずに立ち向かえるようになるため、更なる強さが培われると述べています。

 それを裏づける根拠があります。脳の発達に関する研究で、ミドルティーンやハイティーンの年齢の子どもでも、知能のスコアが向上することが確認されています。たとえば、数学の学力が伸びた生徒は、脳の中でも数学に関連する領域が強化されており、英語の学力が伸びた生徒は、言語に関する脳の領域が強化されていたと言います。また、新しい課題を克服しようとがんばっていると、脳はそれに応じて変化することも確認されています。さらに、脳は完全に「固定」してしまうことは一瞬もなく、生きている限り、神経細胞は互いに新しい結合を増やし、既存の結合を強化する能力をもっていると言います。つまり、人間の脳は常に進歩発展する可能性をもっているのです。こうした所与の能力を信じ、「やればいずれ何とかなる」という前向きで建設的な考えを子どもに授けてやりたいものですね。

 親は子どもが散々なテスト成績をもらったとき、つい「これはいったいどういうことなの!?」と怒鳴ったり問い詰めたりしたくなるものです。しかし、それが続くと子どもは意欲を根底から失ってしまったり、「自分はダメな人間だ」と自己卑下をしたりする人間になりかねません。「あれ?今回はやらかしてしまったね。うーん、残念だね。どうしてこうなったんだと思う?」などとフォローしたならどうでしょう。子どもはそんな親の対応に落ち着きを取り戻し、自分なりの振り返りをする心理的余裕をもつことができるでしょう。また、「つぎはがんばるからね!」と奮起するかもしれません。

 親は「きっとできる」という信念をもち、どんなときにもわが子の立ち直りを信じて励ましてやりましょう。いきなり変わることはできなくても、少しずつ向上することは間違いありません。そんな親のもとにいる子どもは幸せではないでしょうか。どんなときにも自分の味方であり、自分を信じている人がいる。しかもそれが自分の親なのですから!

 何度もお伝えした記憶がありますが、児童期は人生の原風景を築く時期です。「悲観論者になるか、楽観論者になるか」、「すぐにあきらめる人間になるか、粘り強く最後までやり遂げようとする人間になるか」も、児童期までの親子の関係性が少なからず影響するでしょう。親と一緒の時間は、他の誰と一緒にいる時間よりも長いのですから。逆境にへこたれない、強い人間にわが子を育てたいものですね。

 7月1日に実施した「夏のおかあさんセミナー」の結びとして、前出の心理学者の「大人になって成功や失敗をしたとき、その原因を自分の才能に結びつけるか、それとも努力に結びつけるかは、子どもの頃の『ほめられかた』で決まる確率が高い」という言葉を紹介しました。どうほめるかは、わが子の人間形成にとって少なからぬ影響を及ぼします。「秋のおかあさんセミナー」はそのことをテーマに掲げました。

 失敗を能力のせいにせず、自分の努力に帰する人間になることが、当面の中学入試突破につながるだけでなく、前向きな人生を送れる人間になるための重要なポイントでもあります。わが子が自分の可能性を信じる努力の人となるよう、ほめかたについて一緒に研究してまいりましょう。

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「秋のおかあさんセミナー」(会員対象)を開催します!

10月 30th, 2022

 秋が深まってきましたね。中国山地あたりは、山全体が赤や黄色に染まっていることでしょう。気候的条件のよいこの時期は、何をやるにも集中できるし成果もあがります。受験を控えた6年生のお子さんの勉強も、以前よりも相当に実のあるものになっていることでしょう。毎日の学習メニューをしっかりと定め、着実にやりこなしていくとすばらしい成果が期待できます。がんばれ受験生!

 さて、今回は弊社の会員保護者対象の催しのご案内をしようと思います。7月1日に、「夏のおかあさんセミナー」という催しを開催したのですが、覚えておられるでしょうか。そのときは、会員家庭以外の保護者も対象とした催しにしたのですが、今回は弊社の教室に通っている子どもたちのおかあさんを励ます意図で行うため、会員限定とさせていただきます。また、平日は仕事があって参加できないかたがおられることを考慮し、平日と土曜の2回開催としました。

 このセミナーは、「中学受験は、子どもの将来的な視点に立って行うべきものであり、子どもの望ましい成長と歩調を合わせてこそのものである」という方針に基づき、家庭教育との連携をはかるために実施するものです。今日の社会は、知力と人間性のバランスがとれている人間を必要としています。特に、国際社会で活躍できる人間になるためには、児童期に学力育成のみに偏重した生活を送るべきではありません。子どもの人間的側面の成長に目を向けたとき、「わが子をいかにほめるか」は、非常に大きなテーマとなるものです。一緒に、効果あるほめかたを研究してみませんか?

 では、今回のセミナー日趣旨と大ざっぱな内容をお伝えしましょう。なお、まだ検討中の内容もあり、当日は少し違ったものになる可能性もあります。

 

「効果的な‟ほめかた”の実践研究」 ~ほめかたにも‟よい”‟悪い”がある!~

①セミナーの趣旨

 親はわが子に対し、「積極的に学ぶ姿勢をもってほしい」「大人に言われなくても、自分からやるべきことをやる人間になってほしい」と願います。それを実現するうえで重要なカギを握るのが、「いかにほめるか」ということです。子どもの人間的特徴や行動様式がどのように定まるかは、親のほめかたと密接にリンクしています。児童期までの子どもは、いつでも親にほめてほしいし、ほめられることを何よりの励みにします。ただし、ほめさえすればよいわけではありません。よいほめかたもあれば、逆効果を招くほめかたもあります。今回のセミナーでは、「効果的なほめかた」とはどういうものかを事例をもとに考えていきます。子どもは、親から納得のいくほめられかたをされると、バランスのとれた成長を遂げることができるし、親への信頼と尊敬の気持ちを育むことができます。さらには、学業面でも大きな成果を得ることができるでしょう。一緒にほめ上手になる方法を研究し、子どもの望ましい成長を引き出してまいりましょう。

 

➁セミナーの構成

1.あなたはわが子をほめていますか? 現状を振り返ってみましょう。

 多くのおかあさんは、「結構わが子をほめています」とおっしゃいます。しかし、子どもは逆に、「ほめられていない」と思っているケースがあります。いっぽう。親は「あまりほめていない」と反省していても、子どもは「いつもほめてくれる」と感謝している場合もあります。親子っておもしろいですね。弊社の通学生へのアンケート結果を参考にしつつ、「ほめること」「ほめられること」の現状を一緒に振り返ってみましょう。

2.あなたは、どんなときほめていますか?そもそもほめるのは何のためで
  すか?

 あなたはどんなときにわが子をほめていますか? よい行いをしたらほめる、成績が上がったらほめる、約束を守ったらほめる…。いろいろあるでしょう。しかし、これらは「~たら」という条件つきであり、ほめることの本来の目的に適っていません。では、子どもをほめるのは何のためでしょうか? まずはそれを考える必要があるのではないでしょうか。

3.日本の子どもの自己肯定感はなぜ低いのでしょうか?

 日本の子どもは自己肯定感が低いというデータがあります。自分の能力を過小評価しがちです。国際的な学力調査で上位にある日本の子どもの自己評価が低いのはなぜでしょうか。原因を突き詰めていくと、社会的背景もさることながら、親のほめかたや評価のしかたとも無関係でないことに気づかされます。資料をもとに、一緒に考えてみましょう。わが子が将来、海外で働く可能性は決して低くありません。自己肯定感を宿した人間に成長することは、国際社会で自分をまっとうに通用させるうえで不可欠と言えます。

4.何を見てほめるか。それが子どもの価値観に影響します。

 児童期の子どもは、親と生活を共にし、親の子育ての影響を受けて成長していきます。そして、やがて思春期を迎える頃には自分自身の価値観をもつに至ります。この価値観の形成に少なからぬ影響を及ぼすのが、「親がわが子の何を見てほめるか」です。たとえば、結果(テスト結果)を見てほめるか、努力を見てほめるか。同じほめるのでも、子どもに宿る価値観は随分変わります。子どもに親が望むような価値観や生きかたを身につけさせるにはどうしたらよいでしょうか。それをともに考えていきます。

5.子どもの性格に合ったほめかたを研究しましょう!

 このセミナーのハイライトです。子どもにはそれぞれ性格の違いがあります。まずは、わが子がどんなタイプの人間かを、4つの代表的なモデルを参考にして確認していきます。子どもの心に響くほめかた、子どもの奮起につながるほめかたは、子どもの性格によって異なる面もあります。わが子にふさわしいほめかたをそれぞれに研究していただきます。ほめかた一つで、わが子の反応が大きく変わることがあります。ほめかたの研究は、子育て的な観点からも大変重要なもので、親子のコミュニケーションにおいて中核をなすテーマの一つです。新たな気づきや発見があるといいですね。

 

 以上がだいたいの内容です。途中で、何度かおかあさん同士で話し合う場面を設けます。ただし、「意見発表」のような堅苦しいものではありません。お互いに、自分の現状や考えを気楽に話し合うスタイルですから、むしろおおいに楽しい時間になるでしょう。無料の催しになっています。また、途中で会場に隣接するショップのコーヒー(メニューは選べます)を飲みながら、おかあさん同士の雑談タイムも設ける予定です。参加いただいたかたに、「よし、今日から大いに子どもをほめてやろう!」と元気いっぱいになっていただければ幸いです。実は、それがこの催しの最大の意図なんです。

 

2022 秋のおかあさんセミナー 実施要項

●実施日時
1.11月19日(土) 10:30~12:30 
2.11月22日(火) 10:30~12:30
※19日、22日とも内容は同じです。

●対  象
小学1~5年生の会員家庭保護者
※おかあさんだけでなく、おとうさんの参加も歓迎します。

●会  場
パセーラ広島(広島市中区基町6-78)3階 
Sofa BOOK AND CAFE

●申込方法
事前予約要・申込順(11月7日正午受付開始)
※近日中に詳しい案内を会員専用ページに掲載する予定です。

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オンライン親子セミナー‟修道編”実施報告2

10月 23rd, 2022

 前回に引き続き、今回も10月2日に実施した「オンライン親子セミナー‟修道編”」の内容をご報告します。前回の最後に、修道生対象(中2・高3各1クラス)のアンケート結果をご紹介しましたが、ご覧いただいたでしょうか。

 これを見ると、修道生は中学生も高校生も学校が大好きで、愛着をもっていることがよくわかりますね。一つひとつの回答に目を通してみると、中2生も高3生も似たような感想を書いているものの、高校生のほうがより大人に近づいていること、また伝統的な修道生のカラーを身にまといつつあるのを強く感じました。みなさんはどうでしょうか?

 たとえば、「修道のいいところは?」という質問に対しては、中2生も高3生も「自由な校風」「授業の質」「先生のよさ」をあげていますが、他の回答を見ると中2生が「班活動」「設備(人工芝・自販機等)」と答えているのに対し、高3生は「学校行事(学校が名残惜しい?)」「仲間の存在」「何をやっても楽しい」など、数年間修道で生活をした経験が伺える回答がありました。また、「入学して‟成長できた”と思うことは?」という質問に対しても、中2生は修道生としての基本的な事柄に関しての成長を語っているのに対し、高3生は修道での6年近い生活を通して感じる成長を語っています。人間としてのレベルアップを感じますし、修道生としての完成形に近い人間像が見えてくる点がすばらしいですね。

 では、テーマ3で田原校長がお話しくださったことをご報告しましょう。

 

テーマ3 修道生は勉強もちゃんとやっている!

 修道生は結構遊んでいるといううわさも耳にします。実際はどうなのでしょう。実は、前述のアンケートの最後に「1日(平日)どれぐらい勉強をしていますか?」という質問がありました。その結果を田原校長に見ていただいたうえで、修道生の勉強の様子について、学校の働きかけについてお話しいただきました。中2生は平均2時間くらい、大学受験を控えた高3生は猛烈に勉強していますね。

 

 生徒はすごく勉強しているなと感じました。中学受験では親のフォローが大切ですが、中学に入り思春期になると自我ができてきますから、大人に言われて勉強する子は一人もいません。

 成績が上がる生徒は、自分で面白さを感じて主体的に勉強します。伸びる生徒はみんなそうです。激しいスポーツをしていても、高3でぐんぐん伸びていきます。男子校で大切なのは「刺激を与えること」です。修道がどんな働きかけをしているかをご説明しましょう。

1.セミナー合宿

 修道には優秀な子がたくさんいますから、入学後に自信を失ったり元気がしぼんだりする子もいます。でも心配無用です。成績不振の生徒を40名指名し、夏休みにセミナー合宿をやっています。コロナ以前は2泊3日、3泊4日、泊りがけで勉強漬けの生活をしました。大変効果があり、生徒は元気を取り戻して帰っていきます。ただし、コロナ禍にある現在は、学校に通いながら勉強してもらっています。

2.東大見学ツアー

 高1では「東大見学ツアー」というのをやります。OBの力添えで東京ドームホテルに泊まらせてもらい、OBの東大卒有名人に話をしてもらいます。そして、日本最高峰の大学の凄さを実際に見て回ります。生徒全部はとても無理なので、中3の成績をもとにバス1台分、50人を選んで連れて行きます。今はコロナ過なので、OBの東大教授に協力してもらい、スマホで学内を案内してもらっています。普段見ることのできない研究室なども見せてもらえます。この催しは生徒が大変楽しみにしています。

3.東大京大セミナー

 高2生対象です。大学名を掲げていますが、心意気のある者なら皆参加できます。コロナ禍の前は寺を借り切った合宿形式でしたが、今はOB医学部生が手弁当で駆けつけてくれ刺激的な話をしてくれています。このように、生徒のやる気を引き出すための仕掛けをいろいろと考えて実行しています。

 もう一つ、田原校長が強調されたのは、生徒の学びを活性化するうえで「先生と生徒の関係」が重要であることです。西日本の私学の先生方が集まって行われる「英語5技能研修」という催しがあるそうですが、その会場に修道が選ばれたときのエピソードをご紹介ただきました。修道の英語の授業を見て、各地から集まった優秀な先生から多くの感想や意見が寄せられましたが、そのなかに「授業を見て驚き感心したのは、先生と生徒の関係がすばらしい」という評価が多数あったそうです。先生としてのスキルもさることながら、先生と生徒の関係こそ修道が最も誇れるものだと述べておられました。

 

テーマ4 学校愛で繋がる人的ネットワークは、修道出身者の宝物

 最後は、私学としての長い歴史をもち、数多くの優秀な卒業生を送り出している修道だからこそのテーマです。修道卒業生の母校愛や卒業生の人的ネットワークの強さはつとに有名ですが、語ればきりがないほど事例がありますので、田原校長には端的な例をいくつかに絞ってお話しいただきました。

 修道は創始が1725年で、2025年には創始300年を迎えるため、そこで記念式典を予定しています。それに伴い、今私がいる本館も3年後には建て替えることになっています。そんなときには必ずOBが動いて寄付金を集めてくださいます。2025年までに2億円集める計画ですが、すでに今の時点で1億5千万集まっています。こうしたOB諸氏の母校愛や尽力に感謝し、私はいろいろな同期会や同窓会に出席させていただいています。

 たとえば、還暦を祝う会、古希を祝う会などがあります。数年前には、特に大きな会を催された学年がありました。学校から校旗を借りてきて、詰襟の学らんを身にまとい、校旗を先頭に校歌をうたいながらホテルの宴会場に向かって行進されました。このように、母校を愛する気持ちがひときわ強いのが修道の卒業生です。そして、何かあるたびに母校をバックアップしてくださいます。私はそういうOBの会に出席し、現場にいる教員や生徒たちに熱心なOBの方々の存在を伝えています。それが私の使命だと思っているからです。

 修道の同窓会は、関東支部、近畿支部など全国に多数あります。そして毎年のようにOBの集う会が催されています。そのこと一つとっても、修道の卒業生のネットワークの強さ深さを物語っていると思います。

 以上が「オンライン‟親子セミナー” 修道編」のおおよその内容です。残りの約15分は、事前にご家庭からお寄せいただいた質問をご紹介し、田原校長にお答えいただきました。そして、最後に視聴くださったご家庭の保護者と子どもたちにメッセージをお願いしました。みなさん、晴れて修道に合格されたら田原校長が両手を広げて歓待してくださいますよ。修道合格をめざして、実りある受験生活を送ってくださいね。

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オンライン親子セミナー‟修道編”実施報告1

10月 16th, 2022

 朝夕はめっきり冷え込むようになりましたね。今回は、10月2日に実施した「オンライン親子セミナー‟修道編”の内容をご報告しようと思います。事前の申し込みを270名前後いただいていましたが、昼過ぎまで6年生対象の模擬試験があったためでしょうか。視聴されない家庭がままありました。見逃したかたは、よろしければこのブログでおおよその内容をご確認ください。

 この催しは、修道中学校高等学校の応接室から発信しました(セミナーでは、間違って「校長室から」と申し上げてしまいました)。上述のように6年生の模擬試験と日程が重なったため、午後4時からの開始としました。話者は修道の田原俊典校長です。田原校長は、広島の私学で最も強い発信力をおもちの先生です。今回もよいお話をいろいろとお聞かせくださいました。

 まずは開始に先立って、筆者が修道の成り立ちをごく簡単にご説明しました。ご存知のかたも多いと思いますが、修道の前身となったのは1725年に広島藩の藩校として設けられた講学所です。文字通り、「学問(四書五経など)を教え説明するところ」です。広島藩士の子弟教育の場所だったのですね。藩校は全国各地に多数設立されましたが、広島藩の講学所はその中でも最も古いもののひとつです。男子教育の場として設立された、日本で最も長い歴史をもつ私学が修道なんですね。

 セミナーの時間は約1時間という制限がありましたので、当日田原校長にお話しいただく話題の数を4つに絞りました。では、最初の話題からご紹介しましょう。

テーマ1 男を磨く場としての修道

 修道は設立時から今日に至るまで、一貫して男子教育の場として実績を築いておられます。今でも、「男を磨く場」としての伝統を堅持しています。どんな男の子の育成にあたっておられるのでしょうか。

 私立学校には、つくった人の思い、すなわち建学の精神があります。今私が手にしているのは、「男たちの修道」という本です。この本は、ルポライターのかたが取材して書かれたものです。「修道は、なぜ多くのリーダーを輩出しているのか」「修道出身者は、なぜ世界に羽ばたいて活躍しているのか」などについて、本校を取材して書かれたものです。もう一冊ご紹介します。この本は、「名門とは何か」というタイトルの本です。この本は全国の私学30校をピックアップして、その教育の特色を紹介したものですが、修道もその中に選ばれました。どちらの本も、学校が依頼したのではなく、日本の代表的私学のなかから修道が選ばれています。これは、修道の教育の価値を裏づけるものだと思っています。

 修道には、ハビトゥスというか、家付き酵母菌のようなものがあり、そこで学校生活を送ると自ずとかっこいい男の子が育ちます。長い伝統、先輩たちが積み上げてきたものが校風や学校風土を形づくっているからだと思います。公立にも6か年一貫教育がありますが、私学のそれとは異なります。私学には教員の転勤がありません。入学した生徒が6年間成長していく過程を見守ります。だからこそ、入学者全員を型にはめて静かに授業を聞かせ、お利口な人間を育てるような教育はしません。何事も自由にチャレンジさせ、失敗させています。それを笑う者は一人もいません。そういう環境があるからこそ、今できなかいことがやがてできるようになっていきます。その結果として、いわゆるレジリエンスの高い、忍耐力や回復力の強い人間が育っていきます。修道がリーダーを育むのは、そういう土壌があるからだと思います。

 私学には教員の転勤がないため、先を見た視点から生徒の成長を見守れます。また、生徒と学校愛という共通のバックグラウンドで繋がっています。男の子はどうあるべきかを学べる素晴らしい環境があるうえ、少々の失敗はマイナスになるどころか、むしろ男を磨くうえで肥やしになるという骨太な考えに基づいた教育を実践しておられます。6か年一貫教育の利点をうまく生かしておられるんですね。なお、ハビトゥスとは、生活や学びを通して育まれる個人の生きかたのようなものだとご理解ください。

テーマ2 修道でやりたいこと、進むべき道を見つけよう!

 中学高校での6年間で、生徒さんは自分という人間が何者かに気づいていきます。勉学に、また部活に、様々な活動に打ち込むなかで、自分のめざすところ、進むべき道を見つけていきます。修道では、そんな生徒さんにどんなバックアップをしておられるのでしょうか。

 学校生活を有意義なものにするうえで重要なものの一つが施設です。今日ではどの学校でも当たり前のようになっていますが、修道のグラウンドも高品質の人工芝です。プールは体育の授業や水球にも使用できるよう、ボタンで水深0cmから2mまで自在に変えられます。体育館の床材は膝や足首を痛めないようパラフレックスという素材を使っています。授業や班活動を安全なものにするうえで役立っています。

 修道には、中3生対象のFLP(フューチャー・リーダーズ・プログラム)というのがあります。オーストラリアでやるか、修道でやるかを選択できます。国内では、日本のトップランクの大学に留学中の外国人学生約40人が修道に来てくれ、少人数で英語漬けの生活を体験します。国外のグループは、大学でプログラムされたリーダー教育を大学に行って受けます。国際理解教育を意図したものです(残念ながら、今はコロナで外国に行けません)。いずれも夏休み限定の特別体験ではなく、正式な授業と位置づけて2週間みっちり取り組みます。

 なお、修道が誇れるものにSBR(修道ベーシック・ルーブリック)という冊子があり、全生徒が一冊ずつもっています。

・自分が今、どういう態度で学校生活を送っているか(価値観)
・自分は今何ができるか(スキル)

 この二つを柱として、「修道生としてめざすべき姿」に向かって、生徒が自分の力で成長していく取り組みを実践しています。毎年2回、全生徒が自分の言動や行動をテーマに沿って振り返り、目標にどれだけ近づいているかを5段階の指標で確認します。提出されたデータは専門家が分析し、さらに教員がチェックし、生徒に結果をフィードバックします。FLPを体験すると、プレゼン能力、協調性、世界貢献の意識に関する数値が目覚ましく上がります(SBRについてはHPでぜひご確認ください)。

 実は私自身も行くのですが、明日から高2生の修学旅行があります。豪華客船を貸し切り、奄美大島、屋久島に行って、世界遺産となっている自然を体験するのですが、生徒にとっては大切な思い出となる大きなイベントです。新たな友人もできるのも修学旅行の魅力です。また、修道の体育祭や文化祭も生徒にとって大きな成長の場です。体育祭はグリーンアリーナで行いますが、他校の生徒さんや保護者も入って大いに盛り上がります。高3生の仮装行列はとくに有名ですが、下級生が「あんな風になりたい」とあこがれるほど見応えがあります。

 もう一つ、強調しておきたいのが先生と生徒との関係です。本校の先生は「修道で教員になりたい」という人が集まり、自ら勉強し、高い意識をもち、熱心な授業や指導を実践しています。だから、卒業後も生徒との関係が続きます。たとえば、私は校長になって16年経ちますが、入試合格者に合格通知を渡すとき、かつての教え子が父親として息子さんを修道に入れてくれていることに気づくことが多々あります。いつまでも関係が続く。これも本校の教育の表れでしょう。

 こうした要素が、「先々何をめざすか」「どんな人生を歩むか」について内面に様々な影響を与えているのだと思います。とにかく修道は、刺激に満ちた学校生活を堪能できる私学です。

 テーマ②においては、リーダーシップ教育や国際的視野育成などのプログラムを実施したり、様々な行事を実施たり、自己研鑽のシステムを導入したりするなど、修道オリジナルの教育実践についてお話しいただきましたが、学校行事や友人関係、先生と生徒の関係などについての説明を伺うと、さらに修道という私学のもつ魅力がよく伝わってきました。これらが修道生らしさの形成に大きな影響を及ぼしているのは間違いありません。以下は、以前実施した修道生対象(中2生と高3生各1クラスで実施)のアンケート調査の結果をまとめたものです。みなさんそれぞれに、修道という私学、修道生に対するイメージをもっておられると思いますが、アンケート結果で自分のイメージ通りかどうかを確認してみてください。

★アンケート結果(PDF)

 文字数がだいぶかさみましたので、アンケートの結果についてのコメント、および3つ目、4つ目のテーマについての田原校長のお話の報告は次回に譲ろうと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

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オンライン親子セミナー‟広島女学院編”実施報告2

10月 9th, 2022

 今回も前回に引き続き、「オンライン親子セミナー 広島女学院編」の内容をご報告しようと思います。前回のブログのおしまいに、広島女学院の中3と高3の生徒さん各1クラスで実施したアンケートの結果をご紹介しました。そのデータを、よろしければもう一度ご覧いただきたいですね。というのも、そこから広島女学院で学んでいる生徒さんたちの内面や実態をはっきりと知ることができるからです。特に目についたのは、「広島女学院のいいところは?」という質問に対して、中3生も高3生も、ベスト3となっている回答が、先生がよいこと、友達が得られること、校舎がきれいであることです。誰もが実感しているからこそのことでしょう。

 もう一つ、「入学して、‟成長できた”と思うことは?」という質問に対して、中3生でいちばん多かった回答が「学習習慣や学習姿勢が身についた」というもので、2番目が「人前で話すことや新しいことにチャレンジする積極性が身についた」こと、3番目が「コミュニケーション能力が身についた」こととなっています。高3生の回答を見てみると、1番目が「相手を思いやる気持ち、多様な価値観が身についた」(礼拝、平和学習、人権学習などを通して身についたという認識)ことをあげておられ、2番目が「英語力が身についた」こと、3番目が「人との関わりかた(他者の話を聞く姿勢)、コミュニケーション能力が身についた」ことをあげておられます。中学の3年間で、まずは勉学の基礎を固めるとともに、女学院生としての基本的なことを浸透させ、高校生になってからはそれらを土台にして女学院の教育観を修めた人間へと成長しておられる様子がよくわかりますね。アンケートの回答からも、女学院さんの私学としての個性やよさがはっきりと伝わってきますね。

 オンラインセミナーの残り約15分間においては、渡辺校長に3つの質問をし、それにお答えいただきました。

★質問1
校章は学校のシンボルで、学校の特色を物語るものです。広島女学院の校章に込められた意味を教えてください。

 広島女学院の校章には、外周に沿って漢字とローマ字で示された校名の内側にCUMDEOLABORAMUS(クム デオ ラボラムス) ~我らは神と共に働く者なり~という聖句が入っています。その意味はわかりにくいかもしれませんが、キリスト教主義の教育を語ったものです。キリスト教主義教育は、聖書の言葉を大切にする教育を意味します。生徒に聖句を自由に選ばせると、ほとんどの生徒は「CUM DEO LABORAMUS」ではなく、もっと具体的な意味をもつ「あなたの隣人(となりびと)を愛しなさい」などの聖句を選びます。「CUM DEO LABORAMUS」は、様々なキリスト教の聖句の総まとめ的な存在なんだと思ってください。
 なお、校章は広島女学院入学時にもらえるのではなく、入学したらまず中3のリーダーが賛美歌を歌うこと、聖書を読むこと、朝と夕方の礼拝の仕方などを教えてくれます。そして、2週間経った日の放課後に先輩から校章をもらうことになっています。

※校章の中央下には、もう一つ古い校章の時代から受け継いだアヤメの花をあしらった絵図が刻まれています。これは、アヤメの花がどんな土壌にあっても逞しく美しい花を咲かせることから校章のなかに取り入れられたそうです。女学院さんの校風とよくマッチしていますね。

 

★質問2
広島女学院は、どんなタイプの生徒も学校になじみ、女学院生としての誇りを胸に生き生きとした学校生活を送っているという印象があります。その理由についてお聞かせください。

 広島女学院の入学した生徒は、みなさん学校になじんで変わっていきます。なぜかというと、「To Know よりも To Do、To Do よりもTo Be 」という考えかたが広島女学院の教育の根底にあり、それがすべての生徒に浸透しているからだと思います。To Know とは学ぶこと、To Do とはつながる・行動すること、To Be とは認めることで、それはあなたが何者か、生きるために何を大切にしているのかを意味します。この考えは先生も生徒も関係なく、全ての構成員に当てはまるものです。

 人間は、自分を弱く小さいもののように思うときもあれば、何をしても調子よくやれそうに思うときもあります。それらの全部を含めて「あなたは尊い存在なのだ」という聖書の言葉を大切にする教育を広島女学院は実践しています。中1の廊下には、「99匹の羊をおいても、迷える1匹の羊を救いに行く」という絵画があります。この絵画は、自分を1匹の羊のように小さく弱く思えてくるときも、そんな自分を愛し支えてくれている人がいるということに気づかせてくれます。その気づきは、「何事も人のせいにしない」という考えかたや生きかたにつながるのではないでしょうか。広島女学院の生徒は、自分も他の人もかけがえのない尊い存在だという前提に立ち、互いが協力し助け合いながら学んでいます。だから誰もが学校を受け入れ、学校になじみ、生き生きとした生活を送っているんだと思います。

※上記レポートの後半は、校長先生のお話の内容が多岐にわたり高尚過ぎて、うまくまとめることができませんでした。おかしな点があったら筆者の責任です。お許しください。

 

★質問3
広島女学院がめざしているこれからの教育活動についてお聞かせください。

 今日の社会では、「自己責任」ということがよく言われますが、学校にもその言葉が与えられています。子どもの数の少ないので、一人ひとりを大切にする環境も整っていますが、そうなればなるほど「あなたはこれでがんばれるでしょ?」と子どもたちを追いこんでしまう危険性があります。

 広島女学院がめざすのは、こんな風潮のなかでほんとうに子どもが求められる力を育むということです。コロナで3ヶ月学校が休みになったとき、教員が大切にしたのは、「生徒を一人にしない」ということです。生徒が戻ってきたときにも、「あなたは一人になってはいけない」ということを伝えました。今このセミナーを視聴しているみなさんも、今の世の中に対して、一人ひとりが安心できる、一人ひとりが平和を求めているというふうに感じられない人も多いと思います。

 世の中をよくするには一人では非力です。また、子どもたちが「自分は一人ではない」と思える環境が必要です。さらには、子どもたち自身もしっかりと勉強する必要があります。みなさん、今の小学校や塾の勉強を大切にしてください。その日の授業は一生のなかで1回しかないものです。広島女学院も同じ考えに立ち、生徒と学校とが協力して世の中をよくしていくための力を育むような授業を守りつくっていこうと考えています。

 渡辺校長のお話はもっと深く多岐にわたるものでしたが、だいたい以上のような内容だったとご理解ください。残り時間は僅かでしたが、ご家庭から寄せられた質問に濱岡先生と高2の生徒さんとで答えてくださいました。台風の接近と重なり、校舎によっては代替え授業とこのセミナーとが重なってしまいました。視聴できなかったご家庭におかれては、このブログの記事も参考にしていただければ幸いです。

 前回と今回のブログで、広島女学院の教育について新たな発見があったなら幸いです。渡辺校長、濱岡先生、高2の生徒さん、熱心なお話をどうもありがとうございました。

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