トップページ > 読書案内 >  3年生の今月の本 > 3年生におすすめの本
 > きくち駄菓子屋

3年生の今月の本


きくち駄菓子屋 タイトル きくち駄菓子屋
著者 かさい まり(作) しの とうこ(絵)
出版社 アリス館
 

 ぼくは、佐藤(さとう)浩(こう)介(すけ)、10さい。まだ10年しか生きてないから、初めてのことがいっぱいある。うまくいかなくて、時間がかかることもいっぱいある。なのに、母さんはあっさり言う。「新しい町に、早くなれてね」なんて。
 夏休みに入ったばかりのある日。ぼくと母さんは、新しく住むことになった町にむかって、朝早く飛行機(ひこうき)にのった。空港(くうこう)からは電車を乗りつぎ、その次はバスだ。バスをおりると、目の前に今まで見たこともないほどの急な坂道があった。「この坂をあがらないと、おばあちゃんの家につかないよ」母さんは、そう言い終わらないうちに、もう坂道をのぼり始めてる。ぼくは、しかたなくついていった。「ふるさとは、やっぱりいいなあ」母さんは深呼吸してからそう言うと、まぶしそうに目を細めた。
 夏休み前に、父さんと母さんは離婚(りこん)した。そして、おばあちゃん家への引っこしは、夏休みに入ってから母さんが急に決めた。母さんは、何でもすぐ決めて、すぐに実行してしまう。身のまわりのものをあっという間にまとめて、昨日、引っこし屋さんが全部もっていってしまった。
「母さんがんばるから、浩介も新しい町に早くなれてね」母さんの言葉に、ぼくは返事ができなかった。そんなにかんたんにいくわけがない。ぼくは、母さんとはちがって、なれるまでに何でも時間がかかるんだ。前の学校だって、一生けんめいがんばって、やっと友達ができたのに・・・。

●お母さんと共に新しい町に引っ越してきた、引っ込み思案な性格の浩介。新しい家や転校先の学校に馴染めず、うまく友達を作ることもできない浩介は、町の片隅にある一軒の古びた駄菓子屋に足を運ぶようになります。学校に通うことも辛く感じられる浩介にとって、その店で無口なおじいちゃんと静かに過ごす時間が、心の支えになっていたのでした。

Page Top