ぶたのぶたじろうさんは、みずうみにむかってしゅっぱつしました。みずうみは、車でも５０日かかる、とおいきたぐににあります。そんなとおいところまで、わざわざでかけるりゆうは、とびっきり大きな「大マス」というさかながつれると、本にかいてあったからです。
「なに、なに。あぶらがこってりのり、たべてもせかいいちおいしい、大マスだって。」
　大のくいしんぼうのぶたじろうさんは、おもわずよだれをたらしました。ぶたじろうさんは、だれにもまけない、つりめいじんでもあるのです。

　 ぶたじろうさんは、ぶうわーん、ぶうわーんと、車をとばしました。まちをぬけ、むらをこえ、やまをのぼり、さばくをはしり、とうとうさむいさむいきたぐにに、とうちゃくしました。ところが、いくらはしっても、みずうみは見えてきません。目じるしの山も見あたらないのです。
「おかしいな。もう５０日目なのに。」
　そこにあるのは、ウサギみたいにこんもりともり上がったゆきだまりと、コチコチにこおった小さな水たまりだけでした。