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> なつのしっぽ
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タイトル |
なつのしっぽ |
著者 |
椎名 誠 |
出版社 |
講談社 |
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北の国の山奥で、動物会議がありました。
会議の議長は、いのししでした。
「みんなも知っているように、このところ、どの家の赤んぼうも、夜泣きがひどい。風下のさるのむすめたちは、木の実を拾うのがまだへたくそだし、たぬきの長男は、げりばかりしている」
「ひゃっ、ひゃっ」
と、やまねこが笑いました。
「やまねこの家の子どもらは、そろいもそろって忘れんぼう、自分の寝床もまだ覚えられない」
いのししがそう言うと、今度はたぬきが
「ふはん、ふはん」
と、笑いました。
「これは、今年、春が来るのがおそかったからだ。そうして、夏もあんまり暑くないからだ。赤んぼうが泣くのは、空気が冷たいためだし、忘れんぼうの原因は、ひまわりの種が、まだかたいままだからだ。 なにしろ、ひまわりの種は、忘れんぼうの薬だからな」
「なにかいい考えはないか。みんな」
いのししは、そう言うと、会議に出てきたみんなを、じろりと見まわしました。
「夏をつかまえておいたらどうですか、ここん。そうしたら、秋も冬もこないですよ、ここん」と、近眼のあかぎつねが、少し遠慮した声で言いました。
「そいつはすばらしい考えだ」
と、みんなが口々に言いました。
でも、夏はでっかいから、簡単にはつかまえられません。一体、夏がどれくらい大きいか、今度はその話でもめることになりました。
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