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1年生の今月の本


さとるのじてんしゃ タイトル さとるのじてんしゃ
著者 大石 真
出版社 小峰書店
 

 自転車がほしいな――って、さとるは思いました。だって、みんな自転車を持っているんです。仲良しのみのるくんは、自転車に乗るようになってから、森くんや小川くんとばかり遊ぶようになりました。3人とも自転車を持っているからです。
「そうだ、おかあさんに頼んでみよう。自転車を買ってくださいって。」
 学校の帰り道、さとるはそう決心しました。

  でも、さとるは不安です。さとるのおかあさんは、とてもけちんぼうなのです。さとるが何かおねだりしても、すぐに買ってくれたことなんで一度もありません。

 うちに帰ると、おかあさんは、庭で洗濯物を干していました。今日のおかあさんは、何だかとても機嫌がよさそうです。
「うん」
と、さとるはうなずきました。それから、ごくんとつばを飲み込んで、思い切って言いました。
「ねえ、おかあさん。ぼく、自転車がほしいんだよう。買ってよう」
 おかあさんは、だまっていました。そして、しばらくして言いました。
「自転車って、とってもあぶないのよ。どこも自動車でいっぱいでしょう。そんな中を、小さな子どもが走るなんて、おかあさん恐ろしくて胸がどきどきしちゃうわ。おかあさんは、毎日さとるが自動車にひかれやしないかって、そればっかり心配してるのよ」
「大丈夫だよ。けがなんかしないよ」
  さとるがそう言っても、おかあさんは何も言わずに家の中に入ってしまいました。

 もう、何を言ってもむだだということが、さとるには、はっきりわかりました。
 おかあさんの頭の中は、自動車の恐ろしさでいっぱいなんです。さとるの気持ちなんか、ちっともわかってくれないんです。

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