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1年生の今月の本


ほんとのゲンくんみーつけた タイトル ほんとのゲンくんみーつけた
著者 貞広 朱美
出版社 文研出版
 

「さあ、今日は席替えですよ」
 朝の会がはじまると、しみず先生は、黒板に座席表を書き始めました。2年1組の教室は、きゅうにわいわいがやがやと、騒がしくなりました。

「出席簿の順にします。廊下側の前から、男子の1番、2番。その後ろの席が、女子の1番、2番」 
と言いながら、先生は、しかくの中に名前を書き入れました。

  がっかりして、大きくためいきをついているもの、歓声をあげたり、あちこちで合図し合っているもの。教室の中は、はちの巣をつついたような騒ぎです。

「さいごは、わたなべまさるくんとわたなべまきさん、ならんでね」
  先生は、わたなべくんとまきちゃんの顔をちらっと見て言いました。
「わたなべとわたなべが、ごっちんこ」
  小林くんが、すぐにちゃかしました。みんながどっと笑いました。
「不公平だよ。先生。なんで、ぼくだけ女の子とならばなきゃならないんだ」
  わたなべくんが言いました。
「そうね。でも出席簿の順だからね」
「そうだよ。そうだよ」 
と小林くん。
「そんなら、自分がならべばいいだろ」
  2人ともけんかごしです。
「ぼくはやだよ。あんなやつとならぶの。だって、つまんないんだもん。どうせだまりこくってるんだから、1人ですわればいいよ」

 わたなべくんは、大きな声でいって、まきちゃんを指差しました。まきちゃんは、真っ赤になって目をふせました。
「人の気持ちを考えないで、自分勝手なことを言ってはいけません」
 先生の声が、とても厳しかったので、教室の中がシーンとしました。
 まきちゃんは、じっとうつむいていました。
「あんなやつとならぶのやだ」
「1人ですわればいい」
 そんな声が、まきちゃんの耳の奥で、響いています。
 すると、その時、
「先生、おれがならんでいいか」 
 どなったのはゲンくんです。
「えーっ!」
  みんなは驚きの声をあげて、ゲンくんを見ました。

  クラス一体が大きくて、けんかもクラス一強い、“あばれはっちゃく”と言われるゲンくんが、はにかみやのまきちゃんとならぶなんて言い出したのですから。

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