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2年生の今月の本


おにの子フウタ タイトル おにの子フウタ
著者 森山 京
出版社 あすなろ書房
 

 ある晴れた日の昼下がり、花ざかりのさくらの下に、ハナはひとりすわっていました。ござの上にままごとのうつわを並べて、友だちがくるのを待っているのです。

 ハナがひょいと顔を上げたときでした。むかいの竹やぶの中から、子どもがひとり、こちらのほうへかけてきました。男の子はハナに気がつくと、ぎくりとしたように足を止めました。

「あ…」
 ハナがふいに声をあげました。男の子の頭の上に、つのが二本、ぽっちりとはえていたからです。
「あんた、おにの子ね」
 ハナの声が少しばかりふるえました。
「うん」
 おにの子は、頭をこっくりさせました。

  おにの子はフウタと言いました。
「フウタちゃん、ここへおすわり」
 ハナは、自分のまむかいを指しながら言い、フウタの前にさくらの花びらをよそったおわんを置きました。そして
「どうぞおあがり」
と、両手をついておじぎをしました。フウタは、おわんを手にとると、花びらをつまんで、次々と口へ入れました。
「あら!」
 ハナが声をあげたとき、おわんの中はからっぽになっていました。
「おにって、花びらを食べるの?」
「ううん、どうぞおあがりっていったから」
 ちょっとはにかんでフウタが答えました。
「まあ…」
 ふたりは、ひざをつき合わせ、顔を見合わせてわらいました。

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