「ねえ、ママ」
まゆ子は、いきおいよくドアを開けた。
「しってる？　みどり野公園に、サイクリングコースができたんだって。だから、新しい自転車、買って！」
まゆ子は、二年生の今まで、ずっとタクにいちゃんのおふるを使ってきた。ママは、ちょっとの間考えていたが、
「よーし、女の子用のを買おうか」
と言った。まゆ子は、大喜び。

　 つぎの日曜日、まゆ子はとうとう新しい自転車を買ってもらった。ピカピカの真っ赤な自転車を。
「これ、わたしの赤い小馬だ！」
　まゆ子は、さっそく赤い小馬に乗ってでかけた。静かな住宅街を走っていると、踏み切りの音が聞こえてきた。まゆ子は音のするほうに曲がった。
「あれっ、こんなところに公園がある」
　だれも、遊んでいない。まゆ子は、通りすぎようとして、
「あれっ？」
と振り返った。ねこだ！　はいいろのねこがいる。