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2年生の今月の本


まぼろし写真館 タイトル まぼろし写真館
著者 福明子(作)小泉 るみ子(絵)
出版社 学研教育出版
 

 生きている間に見るものなんて、みんなまぼろしのようなものだ――というのが、ひろむじいさんの口ぐせです。たとえ、見るもの全部がまぼろしでも、みんなに最高の写真をとってあげるのが、ひろむじいさんの仕事です。ひろむじいさんのお店「まぼろし写真館」はたそがれ通りにあります。赤いかわらの屋根がかわいい、小さな写真館です。
 さて、今日は写真館のとびらをそっとのぞいている人がいます。ナップザックをせおった男の子のようです。ひろむじいさんはとびらを開けて男の子に声をかけました。「いらっしゃいませ。ぼうや、写真ですか。」「……。」男の子はだまってこまったようにポケットをさぐると、手のひらいっぱいのお金を出しました。「あの……。これで写真、とれますか。」きっと、長いことかかってためたおこづかいなのでしょう。「もちろんですよ、ぼうや。」ひろむじいさんはすぐに大きくうなずきました。そして男の子をスタジオのほうへうながしました。でも……、「あ、あのね、それとね。」男の子は、まだ何か言いたいことがあるようです。しばらく下を向いたり首をかしげたりもじもじしてから、やがて思いきったように一つうなずくと、背中のナップザックからだいじそうに何か取りだしました。

●男の子が取りだしたのは、お父さんとの思い出の古いカメラでした。壊れたカメラをひろむじいさんに修理してもらい撮ってもらった写真は、男の子の最高の写真になりました。そうです。見るもの全部がまぼろしだったとしても、その人にとって、たからものとなる最高の写真をひろむじいさんは残してくれるのです。

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