道子は、いつもジャンケンにまけて、ランドセルをはこぶ役をおしつけられます。今日も、学校の帰り道で、ランドセルのかたまりが動いていました。

「ひえーっ！　ランドセルのおばけ」 マサシがいうと、ユウイチがげらげらと笑いました。
＜ちぇ、ドジ！　またドウコだ＞
　ツバサは思いました。＜ドウコ＞というのは ＜道子＞のことで、それは、おさななじみのツバサと道子だけにわかる、あだなのようなものでした。背中とおなか、それから両方の肩にひとつずつ。道子は、四つのランドセルをぶらさげて、のろのろと歩いていました。

　 ツバサは、家に帰ってからも、不愉快でした。ほかの女の子は、ドウコがジャンケンに弱いのを知っていて、あんなゲームをしかけるのです。ツバサは、体の小さいドウコが、ランドセルのおばけになっているのを見るたびに、胸のいたむような、腹が立つような気がするのです。

　 ところがある時、ツバサは、道子がランドセルを背負っている本当のわけを知ります。