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2年生の今月の本


まいごのしにがみ タイトル まいごのしにがみ
著者 いとう みく(作)田中 映理(絵)
出版社 理論社
 

「もし、あの、もし」ちっちゃな声に かおを あげると、くろい ふくに メガネを かけた、やせっぽちの おじさんがいた。「わっ」びっくりして、しりもちを つくと、おじさんは ぺこぺこ あたまを さげながら、ハンカチで おでこを ふいた。「おそれいりますが、道を おたずねしたいのですが」
 かくれんぼを していたのに、さっきまで、公園の 入り口に たくさん あった じてんしゃが、きれいに なくなっている。「えー、ぼく、まだ みつけてもらって ないのにぃ」おじさんは こくこく うなずいた。「わたくしなどは しょっちゅうです」へへっと、おじさんは わらったけど、ちっとも おかしくない。ぼくが ためいきを つくと、おじさんは、むねの ポケットから カードみたいなものを とりだした。「わたくし、こういうもので ございます」
 <有限(ゆうげん)会社(がいしゃ) 死神(しにがみ)本舗(ほんぽ) 水先(みずさき)案内課(あんないか) 1024号>かんじばっかりで ぜんぜん よめない。「これはですね……」おじさんは、ひと文字 ひと文字 ゆびさしながら、もういちど ゆっくりいうと、カードを うらがえした。<安全・快適(かいてき)に あの世へ おつれいたします>「かんたんに もうしあげますと、わたくし、しにがみで ございます」「しにがみ」「はい」そういって、むねを はる おじさんを 見て、ぼくは ぷっと ふきだした。だって、マンガとか お話に 出てくる しにがみは、もっと おっかなそうで、ちょっと かっこよかったりも するけど、おじさんは ぜんぜん しにがみっぽくない。
 「よく いわれるのです。また イメージを そこねて しまいましたか……」そういって、おじさんは 大きなためいきを ついた。

●公園で道をたずねてきたおじさんは、自分のことを「死神」だと名のります。といっても、気が弱くて情にもろい、やさしい心の持ち主なので、死神としての営業成績もイマイチなんだそう。道に迷ってしまうほどですからね。「みんなより すごいことなんて ない」と自信がもてない“ぼく”は、そんな“しにがみ”に親近感を抱きます。手助けしてあげようかなという気もちが沸き起こりつつ、それはだれかのもとに“しにがみ”を連れて行ってしまうことでもあると気づいて……。

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