ぼくはジェン。この家のゴールデンレトリバーだ。家族はパパとママとユイの三人……なんだけど。リビングの ゆかに ふせたまま、たなに かざられている写真にむかって、「ウー」とうなった。テリーが にこにこ わらってる写真。テリーは ぼくよりも まえに この家でかわれていたイヌだ。
　「テリーは死んでお星さまになったんだ。ユイが ないてばかりいたから、ジェンに この家に きてもらったんだよ」家にきた日の夜、二かいのベランダから みんなで空をみあげた。ひろい空いっぱいに星がキラキラしていた。あれが星なんだ。テリーは、あんな とおくに いってしまったんだなぁ。……そう思ったのに。テリーはまだ、この家の どこかにいて、ときどき すがたを あらわすんだ。ぼくには見えているのに、なぜだか パパもママもユイも、テリーに気づいていない。ねえ、空の とおくに いったんじゃなかったの？　テリーは知らん顔をしている。ねえってば、もう ぼくが この家のイヌなんだけど。ちぇっ。星になって かわいそうだなんて、思わなきゃよかった。ウー、ワンワンッ。頭にきて、テリーに ほえていると、「どうして、なにも ないのに ほえるのかしら」ってしかられる。ふうんだ。悪いのはテリーなのに。