あとで 考えてみたら、あれは ゆめじゃなかったんだな。夜中に 音が したんだ。頭の上のほうからトントコ トンとか カチャ カチャ カッチャンとか。
　つぎの日、学校で なんか へんだなと 気づいた。頭の上に なにか かんじる。トイレに 行って かがみを 見た。え？　かがみに 頭を うんと 近づけてみると、つくえと いすと こくばんが……。教室だ！　頭の上に、小さな 小さな 学校の 教室がある。それだけじゃない。キミドリ色の 小さな 生きものが いる。一、二、三、四ひきも！　バッタかな？　人間みたいな 形を している。ふりはらおうかと 思ったけど、やめた。なんとなく、できなかったんだ。二年二組の 教室に もどって せきに つくと、後ろの せきの ハヤトが ぼくの 頭に 気がついた。「リョウ、頭どうした？」「わからない」となりの せきの アサヒナさんも、ぼくを 見る。「夏休みの間に こうなったの？」ふたりが ヒソヒソ声で いうので、ぼくも ヒソヒソ声で こたえた。「ううん。さっき」いや、夜中だ。夜中に 頭の上から 聞こえたのは、教室を つくる音だったんだ。「教室のよこに、『あたまのてっぺん小学校』っていう かんばんが あるぞ」「あたまの……てっぺん……？」それに、『玉川区立』とも 書いてあるらしい。この学校と 同じ 玉川区の 学校ってこと？　もう、どうなっているんだろう。学校が おわって、ぼくたちは 玉川区役所にむかった。