海のきれいな港町に、『レストラン三つ星』という小さなレストランがあります。お店の主人は、光男さんといって、まだ若いコックさんです。店は、三ヶ月前に開いたばかりなのに、もうつぶれかかっていました。

「明日もお客さんが来なかったら、店をしめることを考えよう」
　光男さんは、いつものように残った料理を持って外に出ました。光男さんは、お店を開いた時からずっと、のらネコに残りものを食べさせてきたのです。外には、何びきもののらネコが、光男さんを待っていました。

　 さっそくはぐはぐとごちそうを食べ始めたネコたちの中から、突然、こんな声がしました。
「スープの味が、いまひとつだなぁ」
「えっ？」
（だれが言ったんだろう？）
　すると、見かけない青い目をしたネコが、こちらを向いています。
「すみません。余計なことを言って。ぼく、ブイヤベースには、ちょっとうるさいんです。」