終業のベルがなって、みんなは校庭に飛び出した。だけどヒロキは、ぐずぐずとのこっていた。今日もまた先生にほめられたんだ。せんせいは、こういった。すっかりおきまりの調子で。

「みんな、本田くんをお手本にするように！」
　先生は知らない。ヒロキのあだなが『おてほん』だって。
　そんなヒロキをおしのけて、犬井フータが外へ飛び出した。
「フータ！　フータ！　きょうはなにしてあそぶ？」
「こんどは、どんないたずらをするの？」
　みんなが、わあっとフータをとりかこむ。フータはちらりとヒロキを見る。
「しいっ。そのはなしは『おてほん』がかえってから」
　ヒロキはかあっとなって、門の外へかけだした。

　 いつものヒロキなら、お母さんや先生に言われた通りの道をまっすぐ帰る。だけど、きょうはちがう。
（『おてほん』なんてもういやだ。まっすぐ帰ったりするもんか。）
　そうしてヒロキは、いつもとちがう道を歩き出した。ずんずんずんずん歩いていく。気がつくと、すっかり道にまよって、いきどまりはぼうぼうのはらっぱ。そこには、古い自動販売機が立っていた。