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2年生の今月の本


金色のやどかり タイトル 金色のやどかり
著者 竹下 文子
出版社 あかね書房
 

 あゆみが、耳のことに気がついたのは、海からかえったつぎの日でした。耳のおくの、ずうっとおくのほうで、ときどきへんな音がするのです。しずかにしていなければきこえないぐらいの、かすかな音だけれど、ざざーっ、ざざーっといったり、ちゃぷん、ちゃぷんといったり、さらさらさらといったりするのです。水がはいっちゃったのかなあ。あゆみは、はじめ、そうおもいました。何日かたっても、耳はそのままでした。

  月曜日。あゆみは、ピアノの日でした。ピアノの先生の家は、あゆみの家から5分くらいのところです。時間におくれそうになったあゆみは走っていきました。いつものかどをまがろうとしたときです。
「あ、あぶない!」
 耳のそばで、だれかの声がしました。
「え?なに?」
 あゆみは、たちどまりました。そのとき、右がわから、いきなり車がとびだしてきたのです。車が走りすぎていったあとで、きゅうにむねがどきどきしてきました。もうちょっとで車にぶつかったかもしれない。あのとき、だれかが「あぶない!」といってくれなかったら。

 でもだれが注意してくれたんだろう。あゆみは、あたりをみまわしました。道にはだれもいません。でも、あの声は、子どものような声で、すぐそばで聞こえたのです。そして、ふしぎなことはそれきりではありませんでした。

●実はあゆみが海で朝から夕方まで遊んでいたときに、耳の中にお引越ししてきたものがいたのです。それはなんとやどかり。あゆみの耳を貝殻とまちがえて入ってきたのでした。不思議なやどかりとあゆみのお話です。 

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