トップページ > 読書案内 >  3年生の今月の本 > 3年生におすすめの本
 > さようならニッポン

3年生の今月の本


さようならニッポン タイトル さようならニッポン
著者 山口 タオ(作) 田丸 芳枝(絵)
出版社 国土社
 

「走太は、ニッポニア・ニッポンという名前の鳥をしっとるか。トキのことだ。」
 おばあちゃんが、なくなってからすっかり元気のなかったおじいちゃんが、ある朝、ぼくに話してくれた。
「新聞に、トキが絶めつするという記事がでておった。いま、最後の一羽が保護施設で飼われておる。わしは、そいつをにがしてやることにした。」
「そんなことしちゃいけないんじゃないの。むりだよ。」
と言うぼくに、おじいちゃんは言った。
「わしは、むかし、ギゾク(義賊)だったんじゃ。」
 辞書で調べてみると、「義」は『正しいこと』、「賊」は『悪者』、と書いてあった。「正しい悪者」って、どういう意味だろう?「鳥は空で死ぬのが幸せのはず。最後に、大空をとばさせてやりたい。」と、おじいちゃんは考えているようだ。

  学校の図書室で、ぼくがトキのことをいろいろと調べていると、担任の先生が新聞の切りぬきをみせてくれた。記事を読んで、ぼくは、おどろいた。『現在のこっているのは、メスのギン。』“ギン”だってぇ。なくなったおばあちゃんとおんなじ名前だ。

●おじいちゃんは、義賊として盗んだ一番の宝物はおばあちゃんだったといいます。そんなおじいちゃんにとって、亡くなってしまったおばあちゃんと、もうすぐ絶滅してしまうトキの命が重なって思えてならないのでした。
実際には、日本産最後のトキは2003年に死亡しています。現在は、中国に残るトキで人工繁殖が試みられています。トキをはじめとした野生動物の絶滅についても知る機会をあたえてくれるお話です。

Page Top