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3年生の今月の本


どんぐりカプセル タイトル どんぐりカプセル
著者 市川 宣子(作)松成 真理子(絵)
出版社 講談社
 

「ひっこし?」ふうちゃんがびっくりした声をだすと、あきちゃんはこまったように下をむきました。「うん。うち、ね。冬休みにさ。」冷たい風のふく、十一月の帰り道のことでした。いちばんなかよしのあきちゃんがひっこしてしまうなんて、ふうちゃんは考えたこともありませんでした。ふうちゃんの目にじわっと涙がわいてきます。
なのに、あきちゃんはかけだしていってしまいました。すぐそこのおやしきの門の前で、きれいな落ち葉とどんぐりがおどっていました。落ち葉を掃いていた小さなおじいさんが「どんぐり、ひろっていきますか?」と声をかけてくれたのです。
(あきちゃん! まってよ、ねぇ、どんぐりなんて、どうでもいいじゃない。)ふうちゃんのほっぺにぽろりとなみだがこぼれました。それを見て、おじいさんはいそいでどんぐりをひろいだしました。ひょいひょいとひろいあげては、これはだめ、これも、とすてていきます。中に虫のすんでいないかどうか調べているのです。ふうちゃんは、どんぐりなんていらないってば! という気もちをじっとこらえて、あきちゃんとおじいさんがどんぐりをひろうのを見ていました。やがて、おじいさんはつやつやのどんぐりをふたつ選ぶと、あきちゃんとふうちゃんの手にひとつずつのせました。(だから、いらないって!)ふうちゃんが手をひこうとすると、手のひらでどんぐりがころん、ところがりました。すると、しゃらん ……しゃらららん どんぐりがかすかな音をたてたのです。え? ふうちゃんはびっくりして、どんぐりを見つめました。

●「どんぐりから聞こえてきた音は、どんぐりの木の楽しみです。どんぐりの木は、思い出を枝にならべてしゃらしゃら鳴らしては、楽しんでいるんです」お屋敷のおじいさんはそう話します。どんぐりの一粒一粒は楽しかった思い出がつめこまれた小さなカプセルなのです。不思議などんぐりの音とともに、ふうちゃんとあきちゃんの思い出も聞こえてきました。

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