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3年生の今月の本


菜の子先生がやってきた! タイトル 菜の子先生がやってきた!
著者 富安 陽子(作) YUJI(絵)
出版社 福音館書店
 

 そのとき、もうとっくに、夕方の5時をまわっていました。もう下校時こくをすぎているのに、それでもお母さんはタカシに、どうしても学校までわすれ物を取りに行ってこいと言うのです。「三日れんぞくで、計算ドリルを学校においてくるなんて!あんたは、三日れんぞくで宿題をやっていかないつもり?」そう言われて、仕方なくタカシは夕ぐれの学校に向かうことにしました。
 夕方6時のかねの音がひびき始めたのは、タカシが正門の前にたどり着いたころでした。もう閉められている門の前でタカシが困っていたとき、とつぜん門の向こうに人かげがあらわれました。「あなたは大野タカシくんでしょう。計算ドリルを三日も学校にわすれっぱなしの」と言うその女の人に、タカシは今まで一ぺんも会ったことがありません。ふしぎそうにしているタカシの顔をじっと見ながら、その人は続けて言いました。
「私は、山田菜(な)の子といいます。菜の子先生とよんでください。せめて、6時のかねがなる前に来ていればよかったんですけど。夕方6時のかねがなってから、すっかり日がくれてしまうまでの時間を、『逢魔(おうま)ヶ(が)時(とき)』といいます。この時間の学校では、何がおこるかわかりません。うっかり私とはぐれると、とんでもないめにあうかもしれませんよ」

●困った子がいると、ふらりと現れ、スッと救いの手を差し伸べてくれる「菜の子先生」。運の良い子ども達だけが出会うことのできる菜の子先生は、今もどこかの学校で、子ども達の様子を見守っているはず。「昼間の空の星のように、今から生まれる雲のように、教室を吹きぬける風のように、たしかにそこにあっても、目には見えない大切なものがある」それを教えてくれるのが、菜の子先生なのです。

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