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3年生の今月の本


だれもしらない タイトル だれもしらない
著者 灰谷 健次郎
出版社 あかね書房
 

 まりこが一日のうち、外へ出て歩くのは、四百メートルほどだ。八時四十五分きっちりに通学バスがくる。それに乗ってまりこはM養護学校に行く。

  まりこは小さい時の病気がもとで、筋肉の力が普通の人の十分の一くらいしかない。歩く時は、普通の人の十倍の力を出さないといけないわけだから、まりこが歩いているときの格好は、うんと激しい踊りを踊っているようなのである。

  まりこが歩いていると、色々な人が色々なことを言うのだった。
「大変でございますね」
「がんばってね」
 お母さんにもまりこにも、はっきり聞き取れる声の人は、そのようなことを言った。二人によく聞き取れない声の人は、
「おぶってやればいいじゃないか」
「あれじゃ日がくれる」
などと言った。お母さんを悲しませ、決してまりこに聞かせたくない言葉をはく人もあった。二百メートルを四十分もかかって歩く子は、何にも楽しみがないと思うらしかった。

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