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3年生の今月の本


しりとりボクシング タイトル しりとりボクシング
著者 新井 けいこ(作) はせがわ はっち(絵)
出版社 小峰書店
 

国語の時間、「好敵手」と書かれた黒板の文字をさしながら、先生は教室を見わたした。
 「この字をなんて読むか、わかる人はいますか。川原くん、どうですか?」
 トレーナーのそでをひっぱってモジモジしながら、先生にあてられた健太(けんた)はしきりにくびをかしげている。「・・・『こうてきしゅ』だよ」ぼくは、いつものようにそっと健太に答えをおしえた。
 うちのクラスでは、2か月に1回ぐらい席がえをする。たいていは自分が好きな席をえらんでいいことになっているから、ぼくはいつも真ん中の席をえらび、健太はぼくの近くの席をえらぶ。健太はいつもぼくのそばにいて、勉強の苦手な健太にぼくが答えを教えてあげている。他の子から「健太はいっつも恭平に教えてもらってズルいよな」なんて言われても気にしない。だって、健太を助けるのはぼくの役目なんだから。
「健太がこまっていたら、ぼくが助ける」そうきめたのは、去年の春だ。理科の授業(じゅぎょう)でアオムシの世話をすることになったとき、虫の苦手なぼくは、だれにも言えずになやんでいた。そんなぼくを見た健太は、学校はもちろん、休みの日もぼくの家にまで来て毎日世話をしてくれた。健太のおかげで、ぼくは、アオムシがチョウになるしゅん間を見られたし、光をいっぱいにあびながら空にのぼっていくモンシロチョウを見ることができた。その美しいすがたを見ながら、「これからはぜったいに健太を助けるぞ」って、ぼくは心にちかったんだ。

●「困ったら助けるのが友達」と考えていた恭平でしたが、ふとしたことをきっかけに、何でも答えを教えるのが本当の友達なのか?と疑問をもつようになります。そんな中、学年行事として開催されることになった「しりとり大会」。その対策として一緒に勉強するうち、単に助け舟を出すだけだった二人の関係は、それぞれの成長と共に少しずつ変わっていくことになります。
 誰でも馴染みのある「しりとり」ですが、事前にじっくり勉強して、真剣勝負として取り組んだことはあるでしょうか?奥深いしりとりの世界を覗く意味でも、とても面白いお話ですよ。

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