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3年生の今月の本


日曜日の手品師 タイトル 日曜日の手品師
著者 岩瀬 成子
出版社 教育画劇
 

 日曜日だというのに、あたしは家でひとりごろごろしていた。母さんは仕事でいなかった。父さんはゴルフ。午後からは雨になった。勉強はいやだし、本を読むのもめんどうだし、テレビを見る気もおきなかった。あたしはガムをくちゃくちゃやりながら、ねころんで窓ごしに雨をみていた。そのとき、げんかんのチャイムが鳴った。ドアを開けると、背のすらりと高い男の人が立っていた。かさがないらしく、帽子もシャツもぬれていた。

「だれ……」
「ぼく? きみのおじさん。あゆみちゃんだろ」
「は?」
 あたしはあいまいにうなずいた。もしかしてゴートウとかユーカイとか、そういうことをする人だったりして。母さんの読んでくれる新聞記事が、頭の中でぐるぐるまわった。知らない男の人と口をきいちゃいけません。母さんは、こわい新聞記事を読んだあとで、必ずそういった。まさかぁ、あたしがサラわれるはずないじゃない。あたしはそのたびにわらっていたのに……。

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