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3年生の今月の本


ユンボのいる朝 タイトル ユンボのいる朝
著者 麦野 圭(作) 大野 八生(絵)
出版社 文溪堂
 

 朝起きてベランダに出たら、ななめ前の10階建てビルの屋上に、どーんと大きなショベルカーが乗っていた。あんな高いところまで、あの重いものをどうやって運んだんだろう。
 ぼくの家は、18階建てマンションの7階。引っこしてきたころはこわくて、ひとりでベランダに出ることができなかった。「幹(みき)は男の子なのに、弱虫だなあ」そう言って笑うお父さんがいっしょだと、ベランダに出るこわさが少しだけへった。ベランダだけじゃない。どこに行ってもお父さんといっしょなら、ぼくの心はいつもあったかくなった。
 でも、去年の秋ぐらいから、お父さんは仕事がものすごくいそがしくなった。しばらくお父さんと顔をあわせることもなかったぐらい、毎日休みなく働いていた。そして、ある日突然、お父さんは会社へ行かなくなった。前みたいに、笑って話をしてくれることもなくなった。お母さんの話によると、お父さんは働き過ぎで心がつかれはてて、何もかもやる気がなくなってしまったらしい。
 今日もお父さんは仕事に行かず、まるで別の人になったみたいに、ただぼんやりとテレビをながめている。そんなお父さんを見ていると、いつもぼくはなみだが出そうになってしまうんだ。

●もの静かで気弱な性格の幹は、学校で嫌がらせを受けたり、クラスメイトからやりたくないことを強要されたりしても、何も言い返すことができません。辛い気持ちや打ち明けたい思いはたくさんあるのに、心の病で仕事を休んでいるお父さんや、その代わりに仕事や家事で忙しく動き回るお母さんには、うまく自分の気持ちを伝えることができずに悩みは深まるばかり。そんな幹を支えてくれたのは、毎朝ベランダから見える「ユンボ」の逞しい姿と、それを操る工事現場のお兄さんでした。

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