「やったー、明日から夏休みだ！」
　１学期がおわった。ぼくは、絵の具セットと習字道具を手さげカバンに入れると、玄関にいそいだ。それなのに……。げた箱の前で、あとから追いかけてきた康太くんと正次くんにつかまった。
　「おい、優太郎！夏休みになったら、毎日オレの家でゲームやろうぜ。今日はその計画たてるから、おまえは新しいゲームもってこいよ！それから、この前みたいに、おやつも三人分買ってきてくれよな。わすれるなよ」
　どうしよう。言わなくちゃいけないことは、わかっている。（毎日ゲームなんかやらないよ。それに、みんなのおやつを買っていくなんてイヤだ。この前、買っていったおやつだって、ぼくのおこづかいで買ったんだから。ぜったいにイヤだ！）でも、ぼくは、言えないでいた。まわりのみんなも、なにも言ってくれない。もし言えば、康太くんと正次くんに乱暴に言いかえされるからだ。
　その時だった。
　「優太郎くんは、いやがってるじゃない。むりやりさそうなんて、よくないと思う」
　そう言ったのは、クラスでいちばんおとなしい友里ちゃんだった。