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> 雨はこびの来る沼
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タイトル |
雨はこびの来る沼 |
著者 |
筒井 頼子 |
出版社 |
福音館書店 |
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土よう日の夕方でした。かやは、ボールをだいて、門の前に立っていました。もうじき、おかあさんが帰ってくるはずです。かやは、一年生の夏休みに、この街にひっこしてきました。かやが二年生になったこの春から、おかあさんは、ちかくのパン屋さんではたらきはじめました。 「ごめんごめん、まった?」
おかあさんは大きなかいものぶくろをもっていいました。
「あたしがはこんであげる」
かやは台所まで、えっさえっさと、かいものぶくろをはこびました。
「ああ、たすかった! お店がとてもいそがしかったの。ぜんぜん休めなかったわ。そのうえ、あしたもお店にでることになってしまって」
おかあさんは、エプロンをつけながらいいました。
「あしたも?日よう日なのに?」
ほんとうなら、おかあさんの仕事は、日よう日、やすみのはずでした。
「でも、あしたはおとうさんがお休みだから、かやひとりにはならないわ。お店からおとうさんの会社にでんわをしたの」
「へえ! おとうさん、お休みなんだ」
それは、めずらしいことでした。おとうさんは、土よう日でも、日よう日でも「お仕事中」の、いつもいそがしい人でしたから。おとうさんがお休みで、おかあさんがお店に出るということは、お休みの一日を、おとうさんとふたりだけですごすということです。
「ねえ、かや。かやが、朝ごはんを作ってくれると、たすかるんだけど」
「あたしが、ひとりで朝ごはんを作るの?」
かやは、いままで、ひとりで朝ごはんを作ったことなどいちどもありませんでした。
「まかせて!できる」
かやは、胸をはってみせました。あしたは、いそがしい朝になりそうです。
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