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3年生の今月の本


とんぼの空 タイトル とんぼの空
著者 津島 節子
出版社 学習研究社
 

 お父さんは、高いビルで鉄骨を組み立てる仕事をしていた。がっしりとした日に焼けた顔で、いつも明るく笑っていたのに、ある日入院することになった。ぼくたち家族は、東京に近い町から、東北のお父さんの生まれた家へと引っこしてきた。去年のくれのことだ。いねがかりとられた広いたんぼと、村を包むように連なる山なみ。古い木造の、大きな平屋建ての家。その家には、おじいちゃんとおばあちゃんと、そして、ねこが住んでいた。このねこの名まえは、「ねこ」だという。

「お父さんが、ゆうたぐらいの子どもだったころ、こいつといっしょに森の中をかけまわっていたんだ。」
「え、お父さんが、子どものころ?じゃ、こいつはいったい、いくつなのさ?」
 ぼくはおどろいて、お父さんとねこを見た。
「さあね。こいつは、変わったねこだから。いろいろと、人にはわからないひみつがあるのさ。なあ、ねこ?」
 お父さんとねこは、なにかひそかに、話し合っているように見えた。とっても仲がよさそうで、ぼくはうらやましくて、なんだかくやしかった。けれども、それからしばらくたっても、お父さんの病気はよくならなかった。とうとう、近くの町の小さな病院に入院し、そのまま、なくなってしまった。ぼくは、三年生になったばかりだった。

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