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3年生の今月の本


空をとぶ一輪車 タイトル 空をとぶ一輪車
著者 鈴木 喜代春
出版社 大日本図書
 

 健はいじめっ子の四年生。健がくると、からだの小さい一年生や二年生はもちろん、からだの大きい五年生や六年生までが、
「あ、健だ」
といって、いやな顔をするのです。この日も、路地であそんでいた子どもたちはみんなはにげてしまいました。でも、ボールを取りに行っていた一年生のはつかまってしまいました。

「よ、にげるなよ」
「どうしてみんな、にげるんだよ」
 今日の健は、少しさびしそうです。寛は、こわい健が、少しこわくない健になったような気がして、じっと顔を見ました。ところが、きゅうにいつもの健です。
「おまえ、持ってるだろう。『金星王ばくはつカード』だよ。見せてくれよ」
 健はそういって、いつもなんでもかりるのです。でも、かえしてくれないのです。寛は、カードをかしたことは、だれにもいいませんでした。じっと、自分の中にしまってかくしつづけました。

 数日後、その日は、児童館で思うぞんぶん一輪車にのって遊べる日でした。寛は、ひとりで児童館へ歩いていきます。道をまがったところで、うしろから声がしました。健です。寛は足をとめました。

「おまえ、もっとちがうカードもってるだろう。それ見せてよ」
「あれしか、ないよ」
 寛は、すばやく児童館へ入ってしまいました。そして、一輪車のれんしゅうを始めました。健のことも忘れてむちゅうでれんしゅうしています。そんな寛を、児童館のまどから、健がこっそりとかくれてのぞいていました。

●こっそり見ていた健ですが、児童館の先生につかまり、一輪車のれんしゅうをはじめるようになります。いじめっ子だった健が、熱中するものを見つけたことで変化していく様子と、そんな健に接する寛の素直さに、現代社会で失われがちな子ども本来のまっすぐな心を思い出すことができる作品です。

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