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3年生の今月の本


ぼくの・トモダチのつくりかた タイトル ぼくの・トモダチのつくりかた
著者 さとう まきこ
出版社 ポプラ社
 

 転校して、一週間がたった。長い一週間だった。だれもぼくに話しかけてくれないし、昼休みのサッカーやドッジボールにもさそってくれない。しかたがないから、昼休みは、毎日図書館で本を読んでいた。ともだちなんて、これからも一人もできそうになかった。ぼくは、こんなやつじゃなかったのに……。
 前の学校では、いつもともだちとふざけあっていたし、手をあげてはきはきと発言するってほめられていたんだ。それが今は、「ぼくも、あそびに入れてよ」というひとことが、どうしてもいえない。

「ちぇっ」
 石ころをけっとばすと、道の反対側までころがっていき、青い車がとめてあるガレージの前でとまった。そこには、茶色い大きな犬がおなかを下にして、ねそべっていた。黄色いみじかいロープで、ガレージのかべにつながれている。毛の色はチョコレート色だが、顔はしらがで白くなっている。もう、年寄りの犬なのかもしれない。バケツの水は三分の一くらいしか入っていなくて、しかも底にみどり色のコケのようなものがついている。えさのさらには、赤とみどりのドッグフードの残りがこびりついていた。ぼくはこの家の人にはらがたってきて、じろじろ家をながめた。さんぽもつれていかないのなら、犬なんかかわなきゃいいんだ。

 それからというもの、毎朝学校へむかうとちゅう、ぼくはあのよごれた犬に、心の中で「おはよう」といった。でも、そばにはいかなかった。なぜって、あの犬のいる家は通学路にあるので、朝はおおぜいの生徒が通る。そんなところで一人でしゃがんで犬をかまっていたら、ともだちのいないさみしいやつって思われるだろう。ぼくにはだいたい想像はついた。でも下校時は、朝とちがってそんなに人がいないから、犬のそばにいってちょっとかまってやる。ぼくはときどき、しゃがんで犬に話しかけるようになった。すると、その犬と心の中で会話できるようになってきたんだ。

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