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3年生の今月の本


悪魔とドライブ タイトル 悪魔とドライブ
著者 長崎 夏海
出版社 小峰書店
 

 「うっ」
 ドアをあけたとたん、あたしはうめいた。すごいボロ家。家賃がすごく安いっていうから、あるていど、かくごはしてたけど……。かあさんは、ひっこしやさんに指示して、家具をおいてもらっている。

「ね、すごくひろいでしょう?」
 はしゃいだ声をだして、あたしのせなかをパシンとぶった。たしかにひろい。前のところは2DKで家族三人。ここは3DKで、かあさんとあたしの二人。とうさんは、一人で別のところにひっこした。

「きょうかたづけるのは、リビングとキッチンとかあさんの部屋。あしたから、かあさんは仕事で、ありさは春休みだからね。」

  かあさんはダンボールをかかえて命令した。かあさんって、いっつもこう。かってになんでも決めちゃって、あとは命令するだけ。りこんに、ひっこしに、転校。もんくをいうひまもなかった。

 つぎの日。おきたのは、もうお昼近かった。かあさんは、もうとっくに仕事にでかけていた。朝ごはんをたべて、自分の部屋にもどったとたん、あたしの体はこおりつきそうになった。へんな生き物が、机の上に、大の字になって眠ってたのだ。人間の形をしているけど、人間じゃないようなふんいき。きっと悪魔だ! ごろんとねがえりをうって、ぱちっと目をあけた。

「で、なに?」
と、悪魔がいった。
「なにって……」
「あんたがよんだんでしょ。」
「よ、よんでませんっ」
「へ?」
 悪魔はきょとんとした顔になった。
「ほんとによんでない?」
 あたしがうんうんとうなずくと、悪魔はうでぐみをしてなにかを考えてるみたい。
「おれとしたことが、でるとこまちがえるなんて、やっぱ、つかれがたまってるんだよなあ」

 悪魔は、大きくためいきをつくと、すっと消えてしまった。でも、それからのあたしは、かあさんにひどいことを言ったり、気がおさまらなくて部屋をめちゃくちゃにしたりするようになって……。これってあの悪魔のせいなのかな?

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