ヘンリー・グリーンは、みんなからこんなふうにいわれている。

「あの子ってさ、お母さんのおなかのなかからうまれてきたんじゃなくて、カカオ豆のなかからでてきたんじゃない？　あのまんまのすがたで、ポンッと」

　いくらなんでも、そりゃないよね？　まあ、とにかく、このヘンリーっていうちょっと変わった男の子は、カカオ豆からでてきたんじゃなくて、ふつうに生まれてきた。

　だけどヘンリーは、まちがいなく、チョコレートが大好きだった。おきまりの朝ごはんは、チョコレートケーキに、ココア味のコーンフレーク。コーンフレークには、もっとチョコっぽい味になるように、チョコレートシロップ入りの牛乳がかけてある。チョコレート牛乳を大きなコップでごくごく飲みほしたあとは、チョコクッキーを五、六まい。前の夜ののこりがあれば、チョコレートプリンだって食べる。日よう日の朝には、チョコアイスもかかさない。

　ヘンリーのお父さんとお母さんは、ヘンリーに好きなだけチョコレートを食べさせていたんだ。