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3年生の今月の本


ぼくだけ知ってるザリベエのひみつ タイトル ぼくだけ知ってるザリベエのひみつ
著者 木村裕一・磯みゆき
出版社 ポプラ社
 

 そのふしぎなできごとは、月曜日の三時間目、算数の時間におこった。
「きのうの宿題をだれかにといてもらおうかな。」
 花田先生がそういって、教室の中をゆっくりと見まわした。はっきりいって、哲也は算数がにがてだ。きのうの宿題なんてまるっきりやってない。ところが、いきなり先生の声がとんできた。
「野中、前に出てやってみろ。」
「ひえっ、おれだ……。」
 哲也はしぶしぶせきを立つと、黒板に向かった。チョークをにぎる手が、じっとりとあせばんできた。答えどころか、式すらうかんでこない。どうしよう……。頭の中はまっ白。時間だけがすぎていく……。

 と、その時、ジジッジジッとかすかな音が聞こえてきた。電波のような音だ。あっ、人の声だ。ジジッジジッという音の中にとぎれとぎれ人の声がまじっている。まるでこわれかけたラジオみたいだ。
「三千三百……ジジッジジッわる六十は……五十五。」
 だれかが、そっと答えを教えてくれているらしい。まさに天の助け!哲也はいわれたとおりの式と答えを黒板に書いた。
「よーし、野中。できるじゃないか。」
 花田先生が、哲也のせなかをトンとたたいた。答えはどうやら、正解らしい。
「いったいだれなんだろう……。」
 哲也はしばらく考えていたが、
「まっ、いいか。」
 その時はまだ、それがすごいひみつを知るきっかけになるなんて、気がつくはずもなかった。

●この不思議なできごとは、教室で飼っているざりがにのザリベエのしわざでした。そうして、それを知った哲也とザリベエの間には、夏休みまでの間にかたい友情が育まれていきます。ちょっと変わった、ザリガニと人間の友情物語です。

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