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3年生の今月の本


ありがとうが言いたかったんだ タイトル ありがとうが言いたかったんだ
著者 吉田 秀樹
出版社 童心社
 

 おっばあのへやには、ぼくのひみつの場所がある。二年生のころ、おかあさんにしかられたぼくは、なきながらおっばあのへやにとびこんだ。ワーワーないて、なきやんだとき、近くのかべに、どうくつみたいな深いあながあるのに気づいたんだ。手を入れると、やわらかくて、あたたかい。もぐりこんで体をまるめると、だれかにだかれているようで、ぐっすりねむってしまった。よく朝、モソモソはい出すと、おっばあが言った。
「いいところを見つけたね。いつでも、おいで。ひみつにしておくからね。」
 それから、ぼくはときどき、そのおし入れでねるようになった。すると、いくらイヤなことがあっても、いい気もちになれた。

 土曜日、ぼくは塾をさぼって、おっばあのおし入れにもぐりこんだ。しばらくして、ふすまのむこうで声がした。おとうさんとおかあさんだ。

「しらないふりをするなんて、おれには、できないよ。」
「そんなことを言っても、先生が、だまっているほうがいいと言うんだからしかたがないでしょう。」
「でも、いくらガンだからって自分の親をだますなんて……。」

  ガン? おっばあがガン?

●ひみつの場所をまもってくれているおっばあ。
「ぼく」がおこられていると、いつも、
「ヒロくんは、ほんとは、とても正直で、やさしい、いい子ですよ。」
 と言ってくれたおっばあ。
「ぼく」は、「ほんとうのぼく」をしんじてくれているおっばあに、せめて“ありがとう”の気もちを伝えたいと考えます。大切な人の「死」にしっかりと向き合い、その人のためにできることを一生懸命考える「ぼく」の姿に、心打たれる作品です。

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