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4年生の今月の本


としばあちゃんのオムレツ作戦 タイトル としばあちゃんのオムレツ作戦
著者 山口 節子
出版社 岩崎書店
 

「四年生にもなって、たまごがわれないなんて、お気の毒ねえ」

 としばあちゃんが、ためいきをついた。テーブルの上は、たまごの殻でいっぱい。そこらじゅうベトベトだ。ぼくの名前は、トチオ。この前の学級会で、オムレツコンテストをすることに決まったのが、悲劇の始まりだった。何とか、それまでにたまご割りだけでも、クリアしておかなくちゃ。とうとう、見かねたとしばあちゃんが、声を張り上げて言った。

「トチ、たまご割りの極意を伝授いたそう」

 なんだか、さっきまでと顔つきが違う。

「極意その一。たまごに感謝の一礼をする。極意その二。たまごを軽くにぎり、肩の力、手首の力をぬく」
「ばあちゃん、けん玉やるんじゃないよ」

 としばあちゃんは、ぼくが何を言ってもお構いなしだ。
「極意その三。左手でボールを支え、おたまごさま、いきます、と心の中でつぶやく。極意その四。無心の気持ちで、おたまごさまをボールのへりに対面させる」

 ぼくは仕方なく、言われる通りにやってみた。コツン。

「あっ!」

 たまごは、静かにボールの中に着地した。

「おみごと!」

 としばあちゃんは、ふふっとわらった。

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