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4年生の今月の本


びりっかすの神さま タイトル びりっかすの神さま
著者 岡田 淳
出版社 偕成社
 

 始は新しい学校に転校してきた。今日から始の担任になる市田先生が、始の肩をぽんとたたく。
「いこうか。四年一組の教室は二階だ。最初は、なれないだろうが、ま、がんばれ。」
 始のお父さんは、七月のなかごろ、とつぜん入院して、あっけなく死んでしまった。おそう式があり、お母さんのつとめさきがきまり、始とお母さんはふたりでこの町にこしてきたのだ。

 なじみのないろうかと階段をあるき、先生のあとについて、教室にはいった。知らない顔がこちらを見ている。どの顔も、みょうにのっぺりした顔に見えた。先生にうながされて、ひとことあいさつするために、一歩まえにでる。「ぼくは…」そこでことばをうしなった。とんでもないものが見えたのだ。目のまえ、一メートルほどのところに、すきとおった男があらわれた。二十センチくらいの大きさの男は、くたびれた背広とよれよれのネクタイで、背なかには小さなつばさがあった。気のよわそうな顔つきで、目をしばたかせながら五十センチくらいをはたはたととんで、ふっときえてしまった。

 いまのはなんだ。そう思ったとき、みんなのわらい声で、われにかえった。顔がまっかになるのを感じた。席につくとけいこう灯のはしに腰かけた男がまた見えた。胸がどきどきしはじめる。ほかのだれもその男の方を見ていない。見えないらしい。なぜ自分には見えるのだろう。算数の時間やテストをかえす時間、男を見ていて、とつぜん始はきづいた。男は最低点をとったもののところにやってくるのだ。

 そうして、始はすごいことを思いついた。あの男をよびよせることにしたのだ。かんたんなことだ。いちばんわるい点、0点をとればいいんだ。

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