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4年生の今月の本


ねこが見た話 タイトル ねこが見た話
著者 高楼 方子
出版社 福音館書店
 

 オイラはのらねこ。ずいぶんまえから、ここにすみついている。うろうろしながらくらしていると、いろんなものを見るぜ。

 ちょうどひと月まえ、父親と母親と小学生くらいのむすこの三人家族が、ずっと空き家になっていた、ちっぽけな家にやってきた。あんないしてきたのは、見かけない小さなばあさんだった。きっと大家なんだろう。ひどく年をとったわりに、女の子のおかっぱのように、かみを切りそろえているのが、なんだかみょうだった。
「もう少し広ければなあ……」
 父親も母親も家がせまいことを気にしていると、ばあさんが、しわがれ声でいった。
「せまくなんかけっして、けっして、ありませんよ。ひと月くらしてごらんなさい。あんまり広いんで、おどろきなさるさ。まるで運動場のようにね。」

 けっきょくこの家族は、その家にこしてきた。それから十日ほどすぎた月のあかるいばんだった。
「いくらうまくたって、なんだってこう毎日、おなじものばかりくわせるんだい」
と、父親がふきげんな声でばんめしにけちをつけた。すると、むすこまでが
「そうだよ。きのうはキノコのスパゲッティー、おとといはキノコごはん、そのまえは、キノコのてんぷら、そのまえは……」
「おいしいんだから、いいじゃない。それに、たくさんあるんですもの」
と、母親はいった。だいどころのゆかいたをはずすと、なんとまあ、まるまる、まるまるうす茶色のキノコのかさが、ところせましとならんでいたのだ! 
「お、おまえは、これをりょうりしていたのかい!? ど、どくキノコだったら、どうするんだい……!」
「へいきよ。大家さんがおしえてくれたんですもの」

  しばらくして、家族のようすが、どうも、まえとちがうことに気づいたんだ。まず、三人とも、あのばあさんのようにかみがおかっぱみたいになってきた。そのうえ、ぜんたいに、ぷっくらしたかおつきになってきた。もうひとつ、ちょっとぶきみだけど、三人とも、ひとまわり小さくなっていたのだ。

 つぎの朝になると、三人とも、まえとおなじかみ、おなじ大きさのままだった。しかし、ばんめしがおわるころになると、またしても……。ひっこしてひと月たった日、三人はどうなったか。とうとうキノコとおなじ大きさになり、家族そろってなにしていたとおもう? おにごっこだぜ。ケラケラわらいながら三人は、運動場にいるみたいにはしりまわっていた。たしかに家がやけに広く見える。ばあさんのいったとおりになったんだ。

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