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4年生の今月の本


お江戸ものがたり(一) タイトル お江戸ものがたり(一)
著者 二村 邦夫
出版社 丘書房
 

 東京の墨田区(すみだく)吾妻橋(あずまばし)にある南蔵院(なんぞういん)というところに、おまいりする人でにぎわうお地蔵さまがいます。ただ、ちょっと変わっていることにはこのお地蔵さま、ナワでグルグルまきにされているのです。ナワでしばられるのは悪い人ですが、お地蔵さまが悪いことをするはずがありませんよね。それがどうしてこんなことになってしまったのかって?

 お江戸の町に、弥五郎(やごろう)という男の人がいました。生まれてすぐにお父さんをなくした弥五郎さんは、お母さんにいつもこういわれていました。
「弥五郎、お前はお地蔵さまにお願いして、やっとさずかった子なんだョ」
 何か悪いことをしたときは、
「弥五郎、そんなことをして、お地蔵さまにすむと思いますか」
いいことをしたときは、
「弥五郎、きっとお前のしたことを、お地蔵さまはよろこんでくださるでしょう」
と、こんなぐあいです。

 お地蔵さまをお父さんのように思って育った弥五郎さんは、うれしいこともこまったことも、何でもお地蔵さまに相談しながら大きくなりました。気立てもよく働きものの弥五郎さんは、大きなごふく屋さんでもう立派な手代さん(てだい)としてはたらいていました。

 ある夏の日のことです。弥五郎さんは、遠くのおとくいさんに白木綿(もめん)五百反(たん)をとどけるため、たった一人でおもい荷車をひいていました。でもあんまり暑いので、とおりかかった南蔵院でひと休みすることにしました。

ひさしぶりにお地蔵さまのお顔をみて、すっかり安心した弥五郎さんは、ぐっすりとねむりこんでしまいました。そしてそれを見たお地蔵さまも、ついつられてうとうとと……。

 それからどのくらいの時間がすぎたでしょう。目がさめた弥五郎さんのまえから、あの重い荷車がきえているではありませんか。ドロボウです。あまりのことに全身の力が抜けてしまった弥五郎さん。お地蔵さまは、そんな弥五郎さんがかわいそうでたまりませんでした。自分が一緒にねむってさえいなければ、荷車はぬすまれずにすんだのに――。さて、弥五郎さんをたすけるために、お地蔵さまが考えた名案とは……?

【 むかし話というとなんだか古くさいイメージがあるかもしれません。でも、この本は子ども好きな作者が誰かとおしゃべりするような気がるな調子でかいているので、主人公たちがとってもみぢかにかんじられます。】

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