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4年生の今月の本


ようこそ魔界伯爵 タイトル ようこそ魔界伯爵
著者 斉藤 洋
出版社 偕成社
 

 智(さとし)のお父さんが車のセールス社内1になって、社長賞をもらった。それでお母さんと二人で豪華バリ島一週間の旅に行ってしまったので、そのあいだ智はお父さんの妹、聖子おばさんの家にあずけられることになった。この聖子おばさんというのが、兄であるお父さんにもよくわからないくらいふしぎな人で、お母さんなどその話を聞いたとき、顔をくもらせて、 
「聖子さんのとこに、智をあずけるの?」 
と言ったほどだ。

 おばさんの家に行ってみると、そこはものすごい大邸宅(だいていたく)で、よくテレビで政治家が住んでいる豪華(ごうか)マンションなんかより、よっぽど広くて立派だった。庭は学校の校庭ほどではないけれど、かなり広い。外国風の古い二階建ての建物は、サスペンスドラマに出てきそうだった。見るもの全てにおどろきどうしの智を部屋まで案内してくれたのは、背が高くて、後ろが二つに分かれた上着を着たおじいさんだった。おじいさんはまるで智の考えていることがわかるみたいだ。そして、聖子おばさんがやってきた。

 33歳にはみえないくらい若くてきれいな聖子おばさんは、とてもうちのお父さんの妹とは思えない、と智は思った。おばさんがさっきのおじいさんにむかって 
「黒川さん。きょうのスケジュールは?」 
と聞くと、おじいさんは午後からやって来る三人のお客さんについて、手帳も見ずにすらすらと答えた。なんでも大会社や銀行の専務(せんむ)とか常務(じょうむ)らしい。そんなえらい人たちが来るのか。智は急におみやげにもってきた塩せんべいがみじめに思えてきた。なんだか気がひけるなあ。

 さてその夜、智は一階の部屋でとんでもない光景を目にしてしまう。それがあんまりとんでもなかったものだから、智はこれを夢だと思うことにしたくらいだ。一体どんな光景だったかというと……、ソファーには足をくんで座るシマもようのライオン、シャンデリアには智くらいの大きさのコウモリ、そしてテーブルにまきつく大蛇(だいじゃ)。

 それだけでも信じられないのに、おばさんが黒川さんの顔をしたヒツジにまたがっていたので、智はあとずさりもできないくらいだった。夢だ、夢だ……。でも、ホントは夢なんかではないことを、智はあとで思い知ることになる。なんと、あの夜部屋にいたのは、善き(よき)妖怪(ようかい)集団 「ガーン」 の戦士たちだったのだ。「ガーン」の戦士たちは、悪の勢力(せいりょく)である「シュー」 と、大昔からずっとたたかいをつづけているのだという。おばさんは人間だけど、ひょんなことから彼らのふしぎな力を借りることができるようになったのだという。おばさんの家に大会社の重役(じゅうやく)たちがやってくるのも、おばさんからいろいろな情報を教えてもらうためだった。

 おばさんは言った。智ちゃんは、「ガーン」の戦士にむいているわ。ヒツジの黒川さんも力強く言った。

「智がおそるべき戦士になる素質(そしつ)をもっていることは、シューのやつらも気づいている!」

「おにいさんには悪かったけど、自動車のセールス競争で一等になるようにしむけたのも、わたしなの。しばらくバリ島にでもいって、るすにしててもらうためにね。」
とおばさん。すべてはさいしょからぼくを仲間にひき入れるための計画だったのだ!つまり、この世界の平和をまもるために、智は戦わなければならないということだ。とつぜんそんなことを言われても、どうしていいかわからなかったけれど、べつに戦士になる決意(けつい)をしたわけじゃなかったけれど、気がつくと智はみんなと一緒に外に飛び出していたのだった。

【 口はわるいけれど、根はやさしい妖怪たちと一緒に、悪の集団に戦いをいどむことになった智。まるでテレビゲームのようなお話ですが、そうかんたんにはもんだいは解決(かいけつ)しません。はたして智は、そしてみんなは、この世界を守ることができるのでしょうか? とてもたのしいお話です。】

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