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4年生の今月の本


子どもべやのおばけ タイトル 子どもべやのおばけ
著者 カーリ・ゼーフェルト
出版社 福武書店
 

 長女のユッタと妹のイルムガルド、弟のベンノーの三きょうだいは、引っこしてきたばかりの家でとんでもないものを見てしまいます。なにを見たのかって? それはおばけです。まよなか、目をさましたきょうだいたちは、窓の上に、白くて、小さくて、とても悲しそうなおばけを見ました。いつもは口のわるいイーミ(イルムガルドのこと)も、末っ子でこわがりのベンノーも、このときばかりは口をあんぐりあけたまま、ひと言もいわずにだまって窓の先を見つめていました。すると、おばけが何かぼそぼとつぶやいています。

「ぼくの名前はフローリアン。こわがらないで。こわがらないで、ね。こわがらないで。」

 おばけにそんなこと言われるなんて……きょうだいは、おばけの「フローリアン」とすっかりなかよくなってしまいます。

 フローリアンは小さな声で言いました。

「ぼくは子どもといっしょにいるのが好きなんだ。」 

「だって、大人はぼくをたすけることはできないから。」

……「助けることができない」ってどういうことなんでしょう。実は、この「フローリアン」は500年前は人間の男の子でした。でも、あんまりケンカばかりしていたので、「けんかおばけ」 としてずっと一人ぼっちでいなければならなかったのです。

 かわいそうなフローリアン、彼をたすけてあげられるのは、子どもたちだけ。フローリアンは三人に言いました。この家の地下室にある「けんかリンゴ」をピカピカにみがいて、井戸(いど)になげこむ――

「そうすればぼくののろいはとけて、自由の身になれるんだ。」

「たったそれだけ?」 
と、長女ユッタが言いました。
「それほどかんたんじゃないんだよ。これには大事なとりきめがあるんだ――つまり、そのリンゴを井戸にしずめるのはワルプルギスの夜でなくてはならない、と決まっているんだ。」
「リンゴはワルプルギスの夜から数えて七日前の夜にだけ、取ることができる。その日以外は、だれにも見つけられない、ってわけなんだ。つまり、七日間のあいだに、ピカピカにみががなくちゃいけないんだ。しかも、実をいうと、そのリンゴは、もいだときには真っ黒なんだ。ぼくの昔の悪いおこないが、黒くこびりついているからさ。」

  それだけではありません。その 「黒いもの」 はちょっとやそっとじゃとれないくらい強力にこびりついているので、ほんとうに必死で、何時間もみがいてやっとほんのすこし金色になるくらいのものだというのです。

 でも、それくらいなら三人でがんばればなんとかなる。そう思ったときです。フローリアンがいっそう悲しげなかおで言いました。
「ひとつ条件(じょうけん)があるんだ! それは、きみたちがなかよくしていないと、リンゴはピカピカになってくれない、ということなんだ。」 
「けんかしないなんてむりよ。」

 すぐさまそう言ったのは、妹のイーミです。

「ぜったいけんかしちゃだめなの?」

 ユッタの言葉に、フローリアンはため息をつきました。

「わかってるとは思うけど、ぼくがいってるのは、本気のけんかのことさ! そのことは、『けんかリンゴ』だって、きみたちと同じくらいによくわかってるんだよ。なにしろけんかにかけちゃ、専門家だからね。だからふざけて口げんかするくらいは、大目に見てくれる。意見があわなくていいあらそいをしたって、やっぱり色が変わることはない。でも、けんかをしちゃいけない、ってときに、思いやりやかしこさをわすれて、怒りやねたみ、つまらない考えから、けんかをしてしまったら――そのときこそは、リンゴは輝き(かがやき)をうしなってしまうんだ。」

【 この三きょうだいにとって、ケンカをしないということがどれだけ大変なことだったか! でも、大好きな友だち、フローリアンのために三人はなんとか力を合わせてがんばろうとします。もちろん、最初からうまくいくはずもないのですが……。三人はフローリアンを助けてあげることができるのでしょうか? 兄弟がいる人は、三人それぞれの気持ちがよく分かると思います。あなたはユッタ、イーミ、ベンノーのうち、誰ににていますか? 相手の気持ちになって思いやりをもつことの大切さをおしえてくれる、心あたたまるお話です。】

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