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4年生の今月の本


「えへんおほん」の大ぼうけん タイトル 「えへんおほん」の大ぼうけん
著者 山下 明生
出版社 文溪堂
 

 児童図書館に、ひとりのお父さんがやってきました。
「ここで、いちばんおもしろくない絵本をかしてください」
「いちばんおもしろい本ですね」
「いえ、いちばんおもしろくない絵本……」

 係のおばさんははらを立てました。
「あなたねえ、そんなのあるわけないでしょう」
「こまったな。なら、すぐにねむくなる絵本は?」
「作家の先生がたは、おもしろい本を書くために、日夜、死ぬ思いで苦労しているんですよ」

 おばさんは、血圧がはねあがったみたいにまっ赤になりました。

「ぼくだって、死ぬ思いですよ。うちの子は、絵本をよんでやらないと、ねてくれないんですよ」
「けっこうじゃありませんか」
「けっこうなものですか! ぼくは旅行会社のツアー・コンダクターです。わがままなお客を案内して世界中をまわっているんです。それなのに、うちの子はぼくの顔さえ見れば、絵本を読んでくれとせがむんです。うちはふたごですから、ふたりがかりでせめてくるんです」

 係のおばさんは、少しきのどくになってきました。

「読まれていない本ならわかりますよ」

  お父さんが借りて帰ったのは、『えへんおほん』という本でした。「おもしろそうじゃないか」と思いましたが、とにかくかし出しカードは、一年間まっ白でした。

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