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ハラ・エルチをたずねて
タイトル | 少年は砂漠をこえる ハラ・エルチをたずねて |
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著者 | 斉藤 洋 | |
出版社 | ほるぷ出版 | |
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「だれよりもさきに、黒い使いハラ・エルチにめぐりあった者は、願いがかなえられるというのはほんとうだろうか……・・。」 モンゴルのどこまでも広がる青い空をながめながら、バートルはぼんやりとそんなことを思いました。そのときです。 「バートル。こんなところで、なにをぼんやりしているのだ。」 声のぬしはホヤグ長老でした。 「おまえ、馬がいないから、競馬(けいば)に出られないと言いたいのだろう。馬なら、うちのを一頭かしてやる。どれでも好きなのをえらべばいい。」 まずしいバートルの家では、少年競馬(けいば)にでるための馬をもつこともできません。 それを気のどくに思った長老が、バートルに声をかけてくれたのでした。でも、バートルはかりた馬で競馬に出るのはいやでした。たとえ競争に勝って乗馬(じょうば)の腕をほめられたとしても、人の馬ではおもしろくもなんともないからです。自分の馬がほしい。バートルはそう思いました。 「ホヤグ長老。最初にハラ・エルチにめぐりあった人間は、願いがかなうっていうのはほんとうでしょうか。」 長老はそうつぶやくと、しばらくとおくのラクダのむれに見入っていましたが、やがて、こう言いました。 「伝説ではそうなっているが、黒い使い、ハラ・エルチに出会った者はいない。ハラ・エルチが何者なのか、くわしく知る者もない。だが、言い伝えにうそがあったというためしもない。おそらく、ほんとうだろう、ハラ・エルチにめぐりあえば、願いがかなうというのは。」 それを聞いたバートルは、馬をかしてくれとたのむかわりに、こう言いました。 「長老。ぼくにラクダを一頭(いっとう)かしてください。」 バートルはこう決めたのでした。砂漠の西のはてにいるという、伝説の黒い使い、ハラ・エルチをかならずさがしてみせる……と。 年とったかしこいラクダと、先祖(せんぞ)伝来(でんらい)の宝刀(ほうとう)(その昔、バートルの先祖はジンギス・カンの騎兵(きへい)の大将だったのです。)をおともにして、少年はひとり、旅に出るのです。 【 みなさんは西の空にしずむまっ赤な夕焼けを見て、とつぜんどこか遠いところへ旅に出てみたくなったことはありませんか? 人にはだれも、どこか見知らぬ遠い場所へ行ってみたい、という、切ないねがいのようなものがあると思います。みなさんもバートル少年といっしょに、広い砂漠を旅してみませんか?】 |