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4年生の今月の本


うそつきの天才 タイトル うそつきの天才
著者 ウルフ・スタルク
出版社 小峰書店
 

 給食を食べ終えると、ぼくはいつものように、答案用紙をつくえの上にそっと広げた。先週の数学のテストで、またしても落第(らくだい)点をとってしまい、先生に
「家へ持って帰って親に見せ、サインをもらってこい」
と、いわれていたんだ。でも、ぼくにはそうするつもりは、はじめからなかった。

  パパもママも、ぼくがクラスで一番の優等生だと信じている。本当は落第点だらけのおちこぼれだとは、これっぽっちも気づいていない。 だから、ぼくはいつもうそをつかなければならない。親のサインが必要なときは、パパの字をまねて、自分で書く。テストについても、宿題についても、とにかくうそをつきまくる。はっきりいって、13歳(さい)にしては、ぼくはうそをつくのがうまい。

 するととつぜん、アーネが肩ごしに、ぼくの手もとをのぞきこんだ。
「あっ、まただ! ウルフがおやじのサインのマネをするぞ!」

 アーネの大声に、みんながまわりに集まった。
「サインをまねるなんて、カンタンさ。目をつぶったって、できるさ!」

 ぼくはそういいかえすと、すぐに目をとじた。

「どう、ちゃんと目をとじてるだろ?」

 ぼくはゆっくりと手を動かした。かんぺきだ。筆力(ひつりょく)もペン先の角度もちょうどいい。
「練習(れんしゅう)のたまものさ。千回は書いた」ところがそのとき、後ろで声がした。

「なるほど。千回とは、すごい」

 そこにはヘンリック・ローセングレンが立っていた。ぼくたちの数学の先生だ。

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