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> ヒットラーのむすめ
タイトル | ヒットラーのむすめ | |
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著者 | ジャッキー・フレンチ | |
出版社 | 鈴木出版 | |
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うっとうしい雨のふりつづく日がつづいていました。マークとトレーシーとベンは、あたらしくできた待合所(まちあいじょ)で、友だちといっしょに、いつものようにスクールバスがむかえにくるのを待っていました。なにもない待合所はたいくつでたいくつでしかたありません。そんなとき、トレーシーがいいました。「アンナが、お話ゲームやってもいいって」。それは、まだ学校に行きはじめたばかりで泣いていたトレーシーをなぐさめるために、アンナがはじめたゲームでした。 「ゲーム」 といっても、アンナの作るお話はとくべつでした。アンナの話をきいていると、たとえどんなにありえないと思うようなお話でも、まるで本当のことのように思えてくるのです。 「オーケー。じゃあ、きょうはなんの話にする?」 みんなが口々に言う中で、アンナがためらいがちに話し出したのは、「ヒットラーのむすめ」の話でした。 「ハイジ」という名前のそのむすめは、大きくて広くて、数え切れないくらいたくさんの部屋があるお城のような家に住んでいました。そこで、ゲルバー先生という女の先生に勉強をおそわっていて、学校にはかよっていませんでした。それから、なぜだかわからないけれども、ハイジはヒットラーのことをけっして「お父さん」とは呼びませんでした。 いいえ、本当は呼ばせてもらえなかったのかもしれないのです。ハイジの周りにはどんなときも護衛(ごえい)の人がついていましたが、本当はいつも1人ぼっちでした。 もちろん、ヒットラーにむすめなんかいなかったはずですから、きっとこれはアンナの作り話です。でも、マークはその話のつづきが気になってしかたありません。 【 第二次世界大戦とか、ナチスとかヒットラーというと、自分とはあまり関係のないずっと昔の話に思えてしまうかもしれません。けれども、世界をみまわしてみると、ナチスに弾圧されたユダヤの人たちのように、理不尽(りふじん)な攻撃(こうげき)に苦しみ、助けを求めている人たちは、まだたくさんいるのではないでしょうか。もしかすると、今のこの瞬間にも、ヒットラーのような人たちはあらわれているのかもしれません。「もし自分が……だったら」。そう考えることでいろいろなことが見えてきます。】 |